2014 Fiscal Year Research-status Report
シュルレアリスムの国際化における創造的変容をめぐる比較研究
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26770052
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石井 祐子 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60566206)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イギリスのシュルレアリスム / 日本のシュルレアリスム / メイヤー画廊 / ロンドン画廊 / グッゲンハイム・ジューヌ / ローランド・ペンローズ / ハーバート・リード / 瀧口修造 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、日本とイギリスにおけるシュルレアリスムの受容について、その概観をできる限り巨視的に捉え、再考察することにつとめた。個別具体的な課題としては、主に1930年代の状況を比較考察するため、史資料の収集と調査を集中的に行った。とりわけ、2月にはイギリスに渡航調査を行い、同地のシュルレアリスム受容において重要な役割を果たしたメイヤー画廊(ロンドン)のアーカイヴを調査したほか、テート・アーカイヴ、テート・セント・アイヴス等で作品・一次資料の調査を行った。特にメイヤー画廊は現在もロンドンで活動を続けており、1930年代の活動に関する回想を現オーナーから聞き取りできたことは大きな収穫であった。また、イギリスのシュルレアリスム研究者と意見交換を行い、今後の共著執筆に向けて打ち合わせを行った。 これらの成果の一部は、「シュルレアリスムとスペクタクル―シュルレアリスム国際展(ロンドン)の「幽霊」をめぐるノート」と題した研究ノートにまとめ、『西洋美術研究』第18号(編集委員会編、三元社、2014年12月)誌上に発表した。また、1930年代後半のイギリスのシュルレアリスム受容を考える鍵となるコーク・ストリートの三つの画廊(メイヤー画廊、ロンドン画廊、グッゲンハイム・ジューヌ)について、その活動と歴史的位置付けを考察した論考をまとめ、学会誌に投稿した(査読中)。なお、今年度4月には、単著『コラージュの彼岸―マックスエルンストの制作と展示』(ブリュッケ)も刊行されており、これまでの研究と今後の研究を繋ぐ大きな成果のひとつとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に従い、イギリスと日本のシュルレアリスムにおける「近代」の問題や「伝統」との関わり、訳語の問題、選び取られたものと選び取られなかったもの等について考察を深めた。資料収集についても、イギリスへの渡航調査により、同地のシュルレアリスムに関する一次資料をまとめて入手することができた。また、日本での文献調査も順調に進められており、両者のシュルレアリスム受容の比較考察を行う基礎が整ったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は平成27年度の研究実施計画に従い、収集した史資料の分析に注力する。また、特に日本のシュルレアリスムに関する論考をまとめ、発表する予定である。とりわけ本年度の調査・検討で浮上した瀧口修造とハーバート・リードのシュルレアリスム受容に関する共通点と相異点を軸に、日本とイギリスのシュルレアリスムの「独自性」や「創造性」、あるいはその限界についても考察を深める。
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Causes of Carryover |
物品(文献)購入への支出を考えていたが、必要文献の額が残高を上回り、かつ年度末に差し迫っていたため、当該物品購入を次年度へ先送りしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の通り、2015年度の助成金を交付していただき次第、必要文献の購入に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)