2016 Fiscal Year Annual Research Report
Acceptance and Development of Hawk Drawings in the Warrior Society
Project/Area Number |
26770053
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
水野 裕史 熊本大学, 教育学部, 講師 (50617024)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 豊臣秀吉「大鷹野」 / 勧修寺家 / 狩野永納 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、武家社会における「画鷹」成立と展開の文化的背景を明らかにすることにある。そこで以下の二つを柱として研究を実施している。 【1】画鷹の調査 画鷹は、中世末期以降の作例が数多く確認できるものの、十分に体系化されてきていない。そのため悉皆調査を本研究課題の第一義としている。最終年度となる本年度は、中世の作例に限定したものの体系化を試み、中国の画鷹との比較を通じて、日本の画鷹の特質を考察した。その成果の一部は『鷹・鷹場・環境研究』1号にて公開した。個別の作例については、米国・メトロポリタン美術館ならびにフィラデルフィア美術館にて特別観覧の機会を得た。狩野常信筆「十鷹書画冊」(メトロポリタン美術館蔵)、「鷹図屏風」(フィラデルフィア美術館蔵)を実見し、武家との関連性について検討をおこなった。その成果は、次年度以降に論文として公表する予定である。 【2】鷹狩との関連性の調査 先行研究では、近世期における画鷹の流行について、感覚的に武家の鷹狩愛好があると指摘されてきた。しかし、鷹狩とは本来公家の文化である。そこで公家が関与していたという仮説をたてて、検証したところ、勧修寺家がその流行に関与していた可能性を見出した。17世紀後半において勧修寺家は、鷹狩絵巻を狩野永納に発注している。それは天正19年(1591)に尾張や美濃で豊臣秀吉がおこなった「大鷹野」を主題とした絵巻であった。徳川政権下において秀吉追慕の美術品を制作することは厳しいものの、制作背景として京の公家文化圏に限定して17世紀後半における秀吉イメージの復興があったという認識を得た。そのため17世紀後半以降における画鷹や鷹狩図の流行の背景には、秀吉「大鷹野」のイメージが投影されたものと考えたのである。その成果の一部は、『デアルテ』33号(九州藝術学会)に投稿し、公開している。
|