2015 Fiscal Year Research-status Report
法隆寺献納宝物と正倉院宝物における上代染織作品の研究
Project/Area Number |
26770056
|
Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
三田 覚之 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 研究員 (00710493)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 法隆寺献納宝物 / 正倉院宝物 / 上代染織 / 文化財保存 / 飛鳥美術 / 奈良美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、法隆寺献納宝物として東京国立博物館(以下、東博)が所蔵する法隆寺伝来の上代裂を中心に、献納宝物及び正倉院宝物の歴史的・文化的背景を造形の側から明らかにするとともに、現在バラバラの状態で保管されている上代裂について、本来作品として仕立てられていた当時の組み合わせを作品調査に基づいて明らかにするものである。また未解明な部分が多い法隆寺裂の全体像についても作品調査と写真撮影によってテータベース化を図るものである。本年度は東博所蔵の正倉院頒布裂について文様構成の研究を行い、実際の修理に反映させることができた。また平成24年度と25年度に行なった法隆寺裂の修理について、その報告論文を執筆した(『MUSEUM』662号掲載予定)。これまで法隆寺裂の修理にともなう配置復元について詳細な報告がなされることはなかったが、本論考では復元配置の根拠とともに、その図像について美術史的な考察を行なった。また法隆寺伝来裂から見出された描絵綾天蓋垂飾について、その詳細を『MUSEUM』656号に報告した。この作品には鉱物顔料によって白虎の絵が描かれているが、これは現存するわが国の本格的絵画としては最古級の作品と考えられる。また白虎の図像としても、有名な高松塚古墳壁画やキトラ古墳壁画より半世紀近く古いものであると考えられ、今後絵画史研究からも注目される作品であると考える。さらに、法隆寺献納宝物の工芸作品と、近年韓国で出土した百済時代の工芸作品について、比較研究を行い、その成果を「百済の舎利荘厳美術を通じてみた法隆寺伝来の工芸作品」として平成27年 10月16日にソウル古宮博物館で行なわれた国際シンポジウム「古代仏塔舎利荘厳と東アジア仏教文化」の場で発表した。また同研究については論文を『MUSEUM』658号に掲載した。そのほか、周辺研究として東博所蔵の十一面観音像(多武峯伝来)について研究を行い、『MUSEUM』660号に論文を掲載した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学会発表と論文発表については年度計画を上回る成果を出すことができた。ただし、本務に専念する時間が予想より多く、国内および海外における調査を十分に行なうことができなかった。次年度では調査にあたる機会を拡充し、研究成果を高めたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
年次計画に沿って、調査並びに学会発表および論文発表を通じての研究成果公表を継続的に実施することができた。次年度では調査にあたる機会を拡充し、研究成果を高めたい。特に中国・韓国における海外調査を実施したいと考えている。また法隆寺献納宝物の染織品には未修理の断片が約1000点残されているため、これらについても継続的な調査を行い。毎年継続的に実施している修理の場で、その研究成果を反映させたい。
|
Causes of Carryover |
前年度は業務の都合上から、地方また海外における調査を行なうことができなかった。このため、本年度においては調査活動を積極的に行い、なかでも中国・韓国における調査活動の旅費、また資料収集費として、次年度使用額をあてたい。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
国内調査:奈良 宮内庁正倉院事務所、奈良 安居院(飛鳥寺)、京都個人 海外調査:中国(中国シルク博物館、陝西省法門寺博物館) 韓国(国立中央博物館、国立扶余博物館)
|