2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26770059
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Research Institution | Kitakyushu Museum of Natural History and Human History |
Principal Investigator |
富岡 優子 北九州市立自然史・歴史博物館, その他部局等, 学芸員 (20508957)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 涅槃図 / 釈迦八相 / 九州 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は涅槃図の総合的研究という長期的な視野に立ち、九州所在の涅槃図を調査し、他地域の涅槃図と比較検討することにより地域的特徴の解明にも挑むものである。昨年度は当該研究の初年度として、1)鹿児島県の涅槃図の実地調査、2)典拠となるテキストの考察、3)九州にある涅槃図の情報収集などを行った。 鹿児島では大乗院(鹿児島市)伝来の釈迦八相図を調査した。これは釈迦の生涯を描いた仏伝図で明時代の制作とされるが、明時代のどこに位置付けるかは研究者間で意見が分かれているが明代絵画との詳細な比較の必要性を感じた。全13幅のうち、第9幅については島津義久が国分・龍昌寺に寄進したものを大乗院に移したことが付属資料より判明しているが、この伝承についても改めての考察が必要で。また黎明館の研究員より鹿児島県内の作品についての情報が得られた。 また、京都国立博物館所蔵『釈迦金棺出現図』の典拠となるテキストについての考察を行った。この作品は平安時代の制作とみられ、釈迦が涅槃に入ってまもなく、実母である摩耶夫人のため棺から起き上がり説法するという劇的な母子再会の場面とともに、鍛冶工純陀が釈迦に最後の供養をおこなう場面が描かれた涅槃図の変化形とも言える作品である。しかし、従来典拠とされてきた『摩訶摩耶経』や『仏母経』に純陀の供養に関する記述はなかった。そこで金棺出現と純陀の供養をつなぐテキストの探索を行い、敦煌周辺において発見されている『仏母経』、また元時代に成立した『勅修百丈清規』に両者をつなぐ痕跡が見られることを明らかにした。この成果については当該年度に学会発表を終えた。 九州国立博物館の『大涅槃展』に伴い行われた「中世絵画史研究会」において九州の若手研究者と交流し新たな情報や協力を得られた。また展覧会に於いては調査予定であった涅槃図数点をまとめて観る機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
九州島内の涅槃図の調査については年度途中より産前産後休暇に入ったために鹿児島の調査のみに留まっているが、当初調査予定であった九州国立博物館本、東長寺本、福岡市博物館本については九州国立博物館で開催された「大涅槃展」において実見することができ当該展示の担当者より多くの情報を得ることが出来たことから、結果おおむね順調と言える。 また、画像の解析やデータベース化は遅れているが、中国絵画また中国由来のテキストとの関係性の解明は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は引き続いて九州内の涅槃図の実地調査を行う。 また当該年度の研究成果より日本で流通した涅槃図については中国絵画はもとより、制作にあたって流行していた涅槃に関するテキストとの関係が見えてきたため、引き続き涅槃とテキストとの関係、また請来版本などとの比較検討も進めていく予定である。 また調査済の作品についてはデータベース構築を逐次してゆく予定である。
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Causes of Carryover |
物品費について、相見積もりを取った結果、価格が下がったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度購入があまり出来なかった専門図書の購入費としたい。
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Research Products
(1 results)