2014 Fiscal Year Research-status Report
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26770061
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
内田 健介 千葉大学, 人文社会科学研究科, 人文社会科学研究科特別研究員 (80706911)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本近代演劇史研究 / 日露演劇交流史研究 / ロシア演劇研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究活動として、小山内薫とスタニスラフスキーの関係を慶應義塾大学図書館の協力により一次資料などの調査を行い、その成果として論文「日本におけるスタニスラフスキー受容の系譜―小山内薫はスタニスラフスキー・システムの受容者だったのか?」を発表した。論文ではこれまで定説となってきた小山内薫をスタニスラフスキー・システムの受容者とすることの誤りを指摘し、彼の演出方法がスタニスラフスキーではなく同時期のアメリカの演出家デヴィッド・ベラスコから学んだものであることを明らかにした。これにより小山内による近代の日本演劇の発展が、より詳細で正確なかたちで再認識することが可能になったことは、日本演劇研究に置いて大きな意義を持つと考えられる。また、論文では日本における俳優養成と演出の発展過程についても新たな知見を定義できたことも重要な意味を持っている。このほか、ロシアのモスクワにある国立文学芸術文書館での調査により、1927年に小山内薫がソヴィエト連邦を訪れた際にメイエルホリド劇場で行った演説記録を発見し、その翻訳と解題を研究成果として発表した。これまで晩年の小山内の演劇観は、本人の演説での発言を元にではなく、それを聞いていた第三者によるものであったが、この研究成果により小山内薫本人の言葉を知ることが可能になったのは小山内薫研究において重要な意味を持つと考えられる。これら日本におけるスタニスラフスキー・システムの受容に関する研究のほか、中国におけるスタニスラフスキー・システムの受容について、中国演劇研究者の協力を得て、中国語文献の翻訳を行った。翻訳の公開は行っていないが、その内容については今後研究会などで報告を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた日本の近代演劇(西洋演劇・新劇)の道を切り開いた小山内薫とスタニスラフスキー・システムの関係性については、順調に研究を進めることができ、その成果を論文を発表したことで、初年度計画していた研究の目的は完全に達成された。このほか海外出張による一次資料の調査も達成することができ、翻訳を公開しおおむね計画通りに研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は初年度の研究成果を踏まえ、第二次大戦以前のスタニスラフスキー・システムの受容について研究を継続し、その成果を論文として発表する計画を進めていく。初年度は個人的に行った研究は順調であったが、各言語のスタニスラフスキーに関する資料の翻訳を行えたものは中国語文献のみで、計画していた外国語文献の翻訳は条件面で折り合わず担当予定のものに断られたため一部遂行ができなかった。今年度はあらたに担当者を探すか、計画していた文献などを変更することで、前年度の計画を引き継いで研究に必要な文献の翻訳と公開を遂行していく。また今年度は最終年度にあたるため、研究を行うだけではなく一般公開形式の研究会を積極的に開催することで研究成果を論文や学会発表のような専門化を対象にしたもの以外でもアウトプットを行い、広く社会に還元していく予定である。
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Causes of Carryover |
人件費においては翻訳を予定していたが条件面で合意を得られなかったため、その分の予算を消化することができなかった。また研究補助要員としてアルバイトを雇ったが、申請時の雇用期間を所属大学からの要請により計画の予定よりも短期間となったため、使用した予算が計画段階より少なくなった。旅費については予定していた日程の都合により学会発表をとりやめたため、国内旅費を使用しなかったことに加え、海外出張においては計画よりも費用が抑えられたため予定金額に満たない消費となった。物品費については初年度ということもあり書籍の購入を必要最低限のものに抑えたため計画より少ない消費となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に未使用だった予算を利用し、今年度に計画している研究を拡充し、より効果が高まるよう研究活動を進めていく。出張費にかんしては可能な限り学会発表など成果公開の機会を増やし、調査期間を延ばすことで資料調査の進度をより高いものとしていく。謝金・人件費については一般公開形式のひらかれた研究会を計画通りに開催し、他の研究者への協力を要請するための費用として利用を計画している。
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