2014 Fiscal Year Research-status Report
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26770062
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
千葉 慶 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 人文社会科学研究科特別研究員 (40440218)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 日活 / 日本映画 / 青春 / 戦後 / 民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
日活映画における青春像の把握を目的として、平成26年度は、存命している日活関係者(特に、監督およびプロデューサー)へのインタビューに従事した。 6月に日活元取締役・松本平氏に面会し、同月、氏の紹介によって、日活出身の映画プロデューサー・岡田裕氏に面会、7月から8月にかけて3度にわたるインタビューを敢行した。助監督時代からプロデュース作品についての詳細を映像で記録し、およそ8万字のインタビュー原稿を書き起こした。また、9月から翌年1月にかけて、松本氏の紹介によって監督の千野皓司氏、千野氏の紹介によって監督の澤田幸弘氏、岡田氏の紹介によってプロデューサーの黒澤満氏、黒澤氏の紹介によってプロデューサーの伊藤亮爾氏、澤田氏の紹介によって監督の小澤啓一氏、蔵原惟二氏に面会し、それぞれ3時間から8時間のインタビューを敢行し、2月から3月にかけて、インタビュー原稿の書きおこしを行った。 インタビュー作業を通して、従来の映画研究では詳らかにされてこなかった、日活独特の採用方法や助監督室の運営・仕組みを詳細に理解することが出来た。さらには、インタビューの予備作業として、インタビュー対象者の作成した作品の収集・視聴・分析を行い、作り手たちが製作時には必ずしも意識しなかった時代との対峙を確認し、インタビューを通して、当事者に確認する作業を行った。その結果として、日活映画が青春映画からニューアクション、ポルノとその主流作品の質を変化させつつ、一貫して、戦後民主主義の重要なキーワードである「自己決定権の尊重」を堅持し続けてきており、かつ、その表現の裏に製作者たちの戦後体験が少なからず関わっていたことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現状の達成度は、当初の予想通りとみなしてよい。その理由は、未だ監督とプロデューサーに限定されているものの、順調にインタビューが進行していること、インタビュー対象者からの紹介を通して、さらなるインタビューの拡大が期待されること、研究成果の発表方法は模索中であるが、確実に、後世に残すべき映像記憶遺産が蓄積されていることを挙げることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、インタビューの範囲を、製作・美術・撮影などのセクションに拡大することと並行して、日活出身俳優へのインタビューを行うことを予定している。また、すでに連絡を取っている出版社との相談を通して出版への具体的方法を考える。さらには、インターネットを利用したインタビュー成果の一部公開への作業を少しずつ開始していくことを予定している。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、予算のほとんどをインタビュー対象者が製作した作品を購入することに使用したが、次年度にもインタビューが継続すること、さらなる資料購入費がかかることが想定されたため、次年度にプールした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
その多くは、インタビュー対象者の関わった作品のソフト購入費にあて、またインタビューの映像データを記録するためのHDDにあてる。また、研究報告書の印刷を研究費で行う可能性がある。
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