2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26770062
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
千葉 慶 千葉大学, 人文社会科学研究科, 人文社会科学研究科特別研究員 (40440218)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 日本映画 / 民主主義 / 日活 / 自己決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究にあたって、申請者は前回の科研「青い山脈の系譜学」を引き継ぎ、戦後日本における「民主主義」表現がいかに映画というメディアの中で受け継がれてきたのかを、日活映画を中心に考察を行った。 前回の研究では、「民主主義」を表現することを明示していた石坂洋次郎映画に分析を限定したが、今回はあえてそれを明示していない日活映画を分析の対象とすることで、戦後民主主義という思想のインパクトの広さを明らかにすることが出来た。また、啓蒙者として民主主義を表現した石坂の世代と異なり、少年期・青年期に民主主義に接した世代の表現を追うことによって、表面的には旧世代への反発と見られる表現が、その実、「自己決定権の尊重」「対話の精神」という石坂洋次郎映画にも見られた民主主義の原則を意識した独自の民主主義表現となっていたことを明らかにした。その最大の特徴は、「自己決定権の尊重」の原則がしばしば守旧勢力の手によって「対話の精神」を引き合いに出され疎外されてしまうことへの警戒であり、旧世代の民主主義のあり方の欺瞞性の告発であった。 さらに今回の研究では、映画分析と並行して、1954年より1980年代までの日活で製作に従事した人々の聞き取り調査を敢行した。取材対象者は20名を超え、録音テープは100時間以上に及ぶ。成果の一部を生かし、日活ロマンポルノ期における記録資料集を作成した。その資料集は2016年秋ワイズ出版より刊行が予定されている。
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