2016 Fiscal Year Research-status Report
上演における参与者の感情と行為―90年代京都のエイズをめぐる社会運動を事例として
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26770068
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹田 恵子 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特任助教 (30726899)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 感情 / 上演 / 情動 / 社会運動 / パフォーマンス |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究において、90年代京都のエイズをめぐる社会/芸術運動における参与者の「感情」に注目し調査を行ってきた。結果当該運動の構成員は運動に参与する際経験する感情は「怒り」や「悲しみ」といった分節化できるものというよりは前言語的で衝動的なもの、すなわち「情動」に近いものであるという事実が明らかとなった。今年度はさらに聞き取り対象者を増やし、資料調査を加え、運動参与者のどのイベントからの影響があるのかを中心に調査した。 結果、二つの重要なイベントが見受けられた。ひとつめのイベントは、1992年10月芸術家の古橋悌二が、HIVに感染したという「手紙」を友人に送ったこと、ふたつめのイベントは、1994年初演のパフォーマンス《S/N》であった。参与者の「感情/情動」のうち特徴的であったのは「責任 responsibility」の感覚であり、何かを受け取ったため、何かをしなければならないといった衝動であった。これらの感覚には当該イベントに関する負の反応、すなわちイベント自体への拒否感等も含まれていた。 これらのことが参与者自らも事業やプロジェクトを開始する契機となった。またその要因としてはすでに京都市左京区を中心にゆるやかなコミュニティが存在し、古橋悌二を中心とした成員と参与者は既知の間柄であったことが考えられた。既に運動のとなるゆるやかな共同性が存在したのである。したがって、今回の調査においては、未知の構成員の参与については明らかになされなかった。今後の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は新たに当該社会/芸術運動に関する資料調査を加え、聞き取り調査もより広範囲の方に行うことができた。おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の調査においては、当該運動の基礎となるゆるやかなコミュニティが存在したことが明らかになったため、未知の構成員の参与については明らかになされなかった。聞き取り調査の範囲を広げ、未知の構成員の参入に関しても調査の対象としたい。
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Causes of Carryover |
13538円とわずかではあるが、次年度使用額が生じた。聞き取り調査の謝金を固辞する対象者が多く、そのためであると考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
謝金支出について。対象者が謝金を固辞する場合、無理にお渡しするわけにもいかず、対策はないといってよい。支出計画に誤りがあったので、今後の計画に生かす。
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