2016 Fiscal Year Research-status Report
比較映画史研究―無声映画期における反古典的形式の形成と展開―
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26770069
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 佐和子 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (90705435)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 映画史 / 無声映画 / オペレッタ / オペレッタ映画 / ドイツ映画 / オーストリア映画 / カバレー / トーキー映画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀後半から20世紀前半におけるヨーロッパおよび日本における無声映画の美学的発展を、他の隣接芸術領域(演劇、美術、文学など)との関連で実証的に解明するものである。本年度は映画と大衆演劇の関係に注目し、主としてドイツ語圏を中心に相互の交流を考察することに集中した。 本年度の成果は以下のとおりである。(1)海外の映画アーカイブにおける一次資料収集と最新の無声映画復元成果を調査するため、ボローニャ国際復元映画祭(6月)およびポルデノーネ無声映画祭(10月)に参加した。ボローニャ国際復元映画祭と同時期にイタリアの主要な映画アーカイブの一つであるチネテーカ・ディ・ボローニャで開催された映画フィルムの保存に関わるシンポジウムに参加し、関連する映画研究者らとの交流を深めることが叶った。国内に関しては、早稲田大学演劇博物館および同大学中央図書館で資料を収集した。(2)1930年代の映画とオペレッタの演出上の比較に関して、フィルム・アルヒーフ・オーストリアにおける試写、オーストリア演劇博物館およびオーストリア国立図書館音楽部門における一次資料調査、ウィーン・フォルクスオーパーでの舞台分析を行い、論文を執筆した(7月)。本論文には、歌役者へのインタビューも併せて掲載した。(3)ウィーン大学日本学科にて、先年度に上梓した、本研究課題の成果の一つである研究書『映画の胎動:1910年代の比較映画史』(人文書院、2016年)の紹介報告を行い、海外の研究者と議論を深めた(1月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外の映画祭やアーカイブにおいて資料収集および研究者との打ち合わせを実施し、多くの映画フィルムを調査することができ、その成果を論文として刊行できたため、研究は順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も引き続き海外の研究機関において資料調査を行う。最終年度であるため、成果の取りまとめをしつつ、次なる研究課題の構想も準備していく予定である。本研究課題で取り組んだことを踏まえて、今後はとりわけ映画と大衆演劇(喜歌劇、カバレーを含む)の関係に焦点を合わせて研究を発展させていきたい。
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