2014 Fiscal Year Research-status Report
| Project/Area Number |
26770078
|
|---|
| Research Institution | Osaka University |
|---|
Principal Investigator |
斎藤 理生 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (40431720)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
| Keywords | 新聞小説 / 戦後 / 織田作之助 / 太宰治 / 新興紙 / 地方紙 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
終戦直後の新聞小説の研究の開始にあたって、本年度は太宰治と織田作之助の新聞小説を中心に考察した。
具体的な研究成果としては、平成26年度中に「太宰治の「東京」の使い方―織田作之助の「大阪」を補助線に」（「文学・語学」2014.12）と「文学作品の輪郭―『大造爺さんと雁』『走れメロス』『パンドラの匣』」（「語学と文学」2015.3）という2本の論文を発表した。前者はシンポジウム（全国大学国語国文学会、2014.5）、後者は講演（群馬大学語文学会、2014.8）での口頭発表を元にしている。前者では織田作之助『夜光虫』（「大阪日日新聞」1946）と太宰治『グッド・バイ』（「朝日新聞」1948）における作中の舞台と紙面との関わりについて言及し、後者では太宰治『パンドラの匣』（「河北新報」1945-1946）の初出紙面における恩地孝四郎の挿絵の役割を分析した。
また、研究会（太宰治スタディーズの会、2014.11）および講演（大阪大学国語国文学会、2015.1）では、織田作之助の新聞小説である『夜光虫』と初出紙「大阪日日新聞」との関わりを考察した。後者の講演では、現在わかっている範囲では戦後日本における最初の新聞小説である織田作之助の『十五夜物語』と初出紙「産業経済（大阪）新聞」との関わりも論じた。『十五夜物語』については「語文」（2015.6）に論文を発表することが決定している。
この他に、大阪・京都・神戸を中心に、戦後における新興紙、それも主に地方の新興紙を中心に調査を進めている。その成果の一つとして、1945年9月から1948年12月までの新聞小説年表をweb上で作成中である。現在75作品を登録している。まだ多くの地方新聞に目を通していないため、現在は非公開であるが、遅くとも研究最終年度には公開を予定している。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度内に2本の論文と4度の口頭発表（講演を含む）を行い、研究の具体的な成果を世に問うことができた。また、次年度にも既に1本の論文の発表が決定している。
平成26年度に考察する予定であった織田作之助の2つの新聞小説については、論文にするまでには至らなかったものの、口頭発表で考察を発表することができた。一方、平成27年度に考察する予定であった太宰治の新聞小説については論文にすることができた。
このように目下の研究対象について多少前後するところはあったものの、研究全体としては問題なく進んでおり、おおむね順調に進展していると判断した。
|
| Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、既に口頭発表を終えている織田作之助の新聞小説『夜光虫』の論文化を進める。
織田作之助・太宰治以外の作家の作品についての調査を進める。具体的には、大佛次郎の新聞小説について考察の手がかりを得ているので、進展させたい。
また、調査の過程で見つかった新資料の公開を順次行っていきたい。さしあたり太宰治の全集未収録資料（アンケート）の公開を『太宰治研究』第23輯（2015.6）において行うことが決まっている。
|
| Causes of Carryover |
当初の計画においては、図書館・文学館・文書館等での資料複写費として一定の金額を計上していた。しかしいくつかの施設においては、閲覧した資料の劣化が激しく、コピーによる複写が認められず、写真撮影で補うことになった。その分の複写費が浮いた。
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
終戦直後の資料を閲覧する研究のため、今後も資料の複写が認められない場合は多いと考える。そのため資料複写費を当初の計画よりも少なめに見積もり、物品費・旅費に充てる。
|
Research Products
(6 results)
