2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26770079
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山本 洋 金沢大学, 国際機構, 准教授 (50583168)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 軍書 / 関ヶ原軍記大成 / 岩国藩 / 吉川家 / 宮川忍斎 / 近世軍書 / 関ヶ原 / 軍記 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の平成26年度においては、当初の計画に基づき『関ヶ原軍記大成』に引用されている書状類から、関ヶ原合戦において徳川家に敵対した大名に関する書状類を中心に典拠の調査を行った。また、同時に『関ヶ原軍記大成』の著者である宮川忍斎の書状、ならびに岩国藩、福岡藩に伝存する記録類の調査・史料収集、および国内の史料館等に所蔵されている『関ヶ原軍記大成』・『関ヶ原軍記大全』の諸本の調査を行った。なかでも『関ヶ原軍記大成』は江戸期に書写され広く流布していることから、本研究では現存する『関ヶ原軍記大成』を網羅的に調査し、成立年代や内容の異同からその成立背景について考察することも目的の一つとしている。そのため、平成26年度は以下の史料館等において『関ヶ原軍記大成』、ならびに『『関ヶ原軍記大全』の諸本の調査を実施した。
・『関ヶ原軍記大成』:岩国徴古館、九州大学記録資料館、京都大学図書館、小浜市立図書館、和歌山大学図書館 ・『関ヶ原軍記大全』:京都大学図書館、九州大学記録資料館、小浜市立図書館、和歌山大学図書館
上記の史料館等所蔵『関ヶ原軍記大成』に加え、国史叢書本、福岡県立図書館蔵本、および筆者所蔵本を比較検討した結果、『関ヶ原軍記大成』にはいくつかの系統があり、「序文」についても書写された時期によって異なることが確認できた。従来『関ヶ原軍記大成』の成立年代については従来正徳三年とされてきたが、すでに報告者が指摘しているとおり、それ以降にも加筆修正されていることから、最終的に本書が成立した時期については諸本間の内容の異同も考慮しつつ、さらに網羅的な調査を行った上で結論を出したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『関ヶ原軍記大成』所載の文書類の内、現段階では約七割の出典が明らかになっている。『関ヶ原軍記大成』・『関ヶ原軍記大全』が所蔵されている史料館等の調査は、当初予定していたものの約半数にとどまっているが、27年度に行う予定であった『関ヶ原軍記大成』掲載史料や文言の異同の比較検討をすでに始めたことから、全体的には概ね予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
『関ヶ原軍記大成』の著者である宮川忍斎は『関ヶ原軍記大全』を増補改訂する過程において、多方面から史料を収集していたことが知られており、吉川家以外の大名家から宮川に史料が送られた事例も本研究を通じて確認できている。『関ヶ原軍記大成』所載の史料の典拠を逐次明らかにすることで、宮川の史料収集の実態が具体的に解明できると思われる。 とりわけ、徳川家から黒田家以外の大名家に宛てられた文書が掲載されている場合や世上に流布していた軍記・軍書類に引用の見られない文書類が引用されている場合は、宮川が大名家から直接史料の閲覧を許されたか、あるいは大名家から掲載の依頼があった可能性が高いと考えられることから、本研究では、そのような文書類にターゲットを絞りつつ『関ヶ原軍記大成』の成立のプロセスおよび背景について引き続き検討を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
初年度に調査予定であった史料館等の調査の結果により、『関ヶ原軍記大成』の諸本間の異同の比較検討を優先的に行っため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究において諸本の調査は研究の重要な目的の一つであることから、26年度内に予定していた残りの史料調査を27年度において行う予定である。
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