2017 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on Pre-war Japanese Authors' Connections through the Analysis of Haruo Sato's Former Collection
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26770086
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
河野 龍也 実践女子大学, 文学部, 准教授 (20511827)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本文学 / 近代文学 / 台湾 / 中国 / 植民地 / 旅行記 / 草稿研究 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度中に掲載された佐藤春夫関係の論文は1件、掲載決定済の未発表論文が3件、実施済の学会発表が3件ある。既発表の1件は、奥山文幸編『蓮田善明論:戦時下の国文学者と〈知〉の行方』収録の「「詩人」と「小説家」の肖像」である。戦時中、春夫が日本浪曼派の青年作家たちの敬意を集めた理由を、保田与重郎と蓮田善明の作家論を比較することで検討した。未発表分は、初期春夫の世界観が後期印象派の絵画理論の影響下に成ったことを論じた「画家の眼をした詩人の肖像」(『日本近代文学』)、春夫の文体と文化論の基礎にハーンへの傾倒があることを論じた「ハーンと大正日本の想像力」(『ヘルン研究』)、春夫の詩と小説の間に、メッセージの伝達先に対する意識の相違が存在することを論じた私小説論「告白の相手は誰か」(共著『「私」から考える文学史:私小説という視座』)の3件が入稿済である。 上記のほか、2016年度の発表予稿「佐藤春夫が描いた厦門」(厦門:「東亜内部的自他認識」国際学術研討会)と国際共著論文「「女誡扇綺譚」の廃屋」(『成蹊国文』掲載)が中国語に翻訳され、現地の研究雑誌に掲載されたことが特筆される。その内容は、国立台湾文学館で開催中の展示「魔幻鯤島,妖鬼奇譚」に活用された。また台南に残る旧「酔仙閣」の建物保存にも影響を与えた。 本研究期間全体では、新宮・台南・厦門での佐藤春夫関連国際シンポジウムの企画・発表を通じて、海外の研究者と春夫研究の重要性を確認できた。また、『佐藤春夫読本』(2015年)の刊行による研究基盤の整備、遺族の協力による佐藤家旧蔵資料の公開、書簡翻刻情報の蓄積、春夫の中国・台湾紀行に関するインタビューの実施や一次資料の収集などに大きな進展があった。戦前の文学者の国際交流と文壇交流の実況を解析し、このテーマを軸に海外の研究者と協力態勢を築くという所期の目的は十分に達成できたと考える。
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Remarks |
厦門大学のスタッフによる本研究成果の中国語訳と同大学出版物への掲載。および台湾の共同研究者による研究成果の中国語訳と国立台湾文学館発行誌への掲載、同文学館における企画展示の打合せ。
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Research Products
(11 results)