2015 Fiscal Year Annual Research Report
ウィリアム・フォークナーの作品における系譜とアイデンティティに関する研究
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26770098
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
島貫 香代子 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (30724893)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ウィリアム・フォークナー / William Faulkner / アメリカ文学 / American Literature |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フォークナー作品における系譜と登場人物のアイデンティティの関係性を考察することにある。アメリカの歴史は移民の歴史でもあるので、この国では系譜/系譜学に対する関心が一般的にきわめて高く、フォークナーによる「系譜」形成もその流れを汲んでいると思われる。最終年度にあたる本年度(2年目)では、フォークナーとアメリカ南部の農園の関係性に焦点を当てることで、作家が急速に失われつつあった南北戦争以前の南部文化の保存・継承を重視していたことについて考察した。具体的には、中期の長編小説『行け、モーセ』を取り上げ、そこに描かれる様々な住居形態を検証した。本研究テーマを掘り下げるにあたり、本年度は昨年度に訪れることができなかったミシシッピ州南部の農園やルイジアナ州ニューオーリンズ近辺を中心に現地調査と資料収集を行った。そして、その成果を所属大学の紀要論文のかたちにまとめることができた。アイデンティティの拠り所の変化に対するフォークナーの幻滅を執筆当時の住宅事情から明らかにした本論文は、今後のフォークナー研究に一石を投じるインパクトがあると思われる。 2年間の研究期間を通して主に『行け、モーセ』に注目してきたが、研究計画に基づいて『アブサロム、アブサロム!』以降のクエンティンからアイクへの語り手の変更や『行け、モーセ』におけるアイクの役割などを系譜とアイデンティティの観点から考察することができた。本研究期間中にフォークナー作品の「系譜」について総括することはできなかったが、最終年度の紀要論文で『行け、モーセ』が「コンプソン付録」に与えた影響に言及するなど、フォークナー作品の間テクスト性を再確認できた。さらに、家系図にとどまらない広い視野でフォークナーが創造/想像した「系譜」の意義を検討できることが明確になったため、今後も本研究課題について継続的に考察を重ねていく予定である。
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Research Products
(1 results)