2014 Fiscal Year Research-status Report
農業環境から見るエミリィ・ディキンスン――マサチューセッツ農科大学誘致を中心に
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26770103
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
吉田 要 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 助教 (80705244)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エミリィ・ディキンスン / エドワード・ヒッチコック / ウィリアム・スミス・クラーク / エドワード・ディキンスン / アマスト / マサチューセッツ農科大学 / 農業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はマサチューセッツ州アマストへの農科大学誘致という地域の農業環境にアマストの詩人エミリィ・ディキンスンを位置付けて、農業という観点から彼女の詩作環境を明らかにし、彼女の詩と農業との関係に焦点を当てることが目的であるが、平成26年度は農業の中でも果樹(栽培)に焦点を絞って、ディキンスンの詩作環境の一端を明らかにした。 その成果は、ディキンスン家に小規模ながら存在した果樹園が彼女に詩の題材を提供し、彼女が詩を書く環境を作りあげていたことを、新英米文学会第45回全国大会のシンポジウムで「育まれ成熟する場所――ディキンスンの果樹園」(関西外国語大学、8月)と題して発表し、その後、当学会の学会誌に投稿したことに表れている(査読結果は平成27年5月頃に出る予定)。この発表準備を通して、当時の新聞記事に果樹栽培や果実酒造りについての指南文が掲載されていたことを知ったことは大きな収穫である。 第二の成果は上述の内容とも関係するが、アマストにおける農業関係の新聞記事を収集できたことである。これは当初の予定通り、当該新聞を所蔵しているアマストのJohns Libraryへの出張と別の新聞のアーカイブを提供しているインターネットサイトの利用によるものである。渡米は国際エミリィ・ディキンスン学会への参加と時期を合わせ、帰国後、学会参加報告文をまとめた。 第三の成果はアマストやマサチューセッツ州、アメリカ合衆国の農業に関する図書、マサチューセッツ農科大学初代学長のウィリアム・スミス・クラーク関連の図書、エミリィ・ディキンスンの研究書を収集できたことである。ディキンスンの研究書のうち『白の修辞学――エミリィディキンスンの詩学』(松本明美著、2014年)については、書評の執筆に結びついた(平成27年度7月発行の新英米文学会会誌に掲載予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の研究実施計画のうち、ディキンスンの地元の新聞記事を収集・整理することは大きな比重を占めていたが、二度にわたる滞米計画の二度目が延期になってしまったため、十分な分量の記事を収集するまでには至らなかった。更に、一度だけの滞米中は国際ディキンスン学会に合わせての日程で十分な調査日数を確保できなかった上、図書館の臨時休館にも重なってしまった。加えて、新聞はマイクロフィルムでの所蔵だったために、文字を認識すること自体に困難を伴った。インターネットのアーカイブサイトも、クリックしても記事を閲覧できないことが多々あり、記事の収集は容易ではなかった。 アマストやマサチューセッツ州の農業、ウィリアム・スミス・クラーク、エミリィ・ディキンスンについての研究は、それぞれ十分とは言えないまでも概ね良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
継続してディキンスンの地元で発行された新聞から農業に関連する記事を収集する。平成27年度においても、研究実施計画通り、インターネットのアーカイブサイトを利用しつつ、夏期休暇中にJohns Libraryで調査に当たる予定である。 本年度はウィリアム・スミス・クラーク、ディキンスンの父親で地元の名士であるエドワード・ディキンスン、アマスト大学の学長経験者エドワード・ヒッチコックらがいかにアマストの農業に関わっていたのかをまとめることも大きな目標である。この三者のうち、研究が最も進展した一人については、エミリィ・ディキンスンとからめて12月の首都大学東京・東京都立大学英文学会で口頭発表する予定である。 そのほか、他のプロジェクトの一環でディキンスンと鉄道についての研究を進めているので、アマストに鉄道が開通することが、ディキンスンや地域の農業環境にどんな影響を与えたのかについて論文で触れることも大きな目標である。 また、学術的価値の高い書籍については、本研究の成果をこまめに蓄積するためにも、書評を執筆したい。
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Causes of Carryover |
新聞記事の調査・収集のために計画していた二度の渡米が一度しか実現しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
8月の国際エミリィ・ディキンスン学会にあわせての出張と、その後にもう一度、新聞記事・資料収集のための旅費として使用する予定である。ウィリアム・スミス・クラーク関連の資料を収集するために、北海道大学に赴く可能性もある。
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