2017 Fiscal Year Annual Research Report
The representation of White Working-Class and Anti-Capitalism in Contemporary American Literature
Project/Area Number |
26770104
|
Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
栗原 武士 県立広島大学, 人間文化学部, 准教授 (00462143)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 現代アメリカ文学 / ジェンダー / 白人性研究 / 資本主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、スケジュールの問題で前年度に執行する予定だった米国への海外出張を行い、インディアナ大学リリー図書館およびオハイオ州立大学トンプソン図書館の特別コレクション所蔵のレイモンド・カーヴァーのオリジナル原稿を調査することができた。資料では編集を経てカーヴァーが作品を深化させていく過程で、「オーガニックな食」という理想的なイメージに資本主義的な価値観へのアンチテーゼを重ねていることが分かった。具体的には短編「ささやかだけれど役に立つこと」の冒頭シーンの編集過程や、詩「鷲」に描かれる食べ物の描写が該当する。 今回の研究出張では、本研究の大きな柱の一つである白人性表象の研究という点においてはめぼしい収穫はなかったものの、食と資本主義の関連については11月の日本英文学会中国四国支部大会(岡山県就実大学)における「レイモンド・カーヴァー作品における食の衰微」という発題とあわせ、今後の重要な研究テーマとなりうる。 活字になった研究業績としては、前年9月に行った口頭発表をブラッシュアップし、論文「アメリカ労働者階級研究のいま:その歴史的経緯と将来的展望」(『県立広島大学人間文化学部紀要』)をまとめることができた。1990年代以降のアメリカにおける労働者階級研究の進展を歴史的に捉え直すことで、現在求められる労働者階級研究および労働者階級文学の社会的意義を改めて明確にすることができたと考えている。 全体としては、カーヴァー作品における資本主義とそれに対する問題意識ついての研究はかなり進展したものの、その他の作家、例えばリチャード・フォードやトバイアス・ウルフ、ラッセル・バンクスの作品群については十分に考えをまとめることができなかった。この点については、今後も継続的に研究を進めていきたいと考えている。
|