2015 Fiscal Year Research-status Report
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26770105
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
松田 智穂子 専修大学, 経済学部, 講師 (90646887)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 演劇 / ナショナリズム / 国立劇場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、今日各国で採用されている国立劇場制度と文化政策の生成と運営について、その①一国の近代化過程におけるナショナリズムと連動した政治的機能、および②インターナショナルな文脈の中で、自国のアイデンティティを確立・発信する文化的機能の二点を、複数のケーススタディを取り上げ、その個々の分析を通じて明らかにすることが目的である。 H26年度の報告書に記した通り、新たに興味深い事例だと判明したジャマイカ(英語圏カリブ地域)と国立劇場を持たない国・アメリカ合衆国の両ケースについては、20世紀のブラック・ナショナリズムの展開とナショナル・シアターという新たな切り口を取り入れ、関連の深いモダンパジェント・ムーヴメントと併せて考察を進めた。成果として、日本演劇学会全国大会にて「ジャマイカの勝利」(1937)―多人種のモダン・パジェント」および米国のケースとして「ブラック・ナショナリズムとモダン・パジェント―W.E.B.デュボイスにみる」(於・日本演劇学会西洋比較演劇研究会例会)という研究発表を行い、論文「『凱旋のジャマイカ』(1937年)―モダン・パジェントに見る多人種・多民族」を発表した。 またH28年2月にジャマイカとニューヨークで資料収集を主とする現地リサーチを敢行した。ジャマイカでは西インド諸島大学図書館およびジャマイカ国立図書館にて資料収集を行ったほか、現地で1970年代に旗揚げされた社会はコミュニティ劇団Sistren Theatre Collective創設者の一人Honor Ford-Smith氏、演出家Eugene Williams氏、Edward Baugh西インド諸島大学名誉教授と意見交換した。研究計画調書では、本研究を効果的に進めるために同分野の他の研究者から助言や情報を得ることの重要性を強調したが、ジャマイカでの意見交換はこうした点での成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度の報告にて、ジャマイカの各論に関しては、国立劇場と観光産業とのかかわりという当初予定していた内容を変更し、代わりに20世紀初頭の国民演劇運動とブラック・ナショナリズムとの関連について考察を行うと述べた。この件の成果については口頭発表を済ませ、論文にまとめることができた。 H26年度より新たに加えた視点である、米国とジャマイカにおけるブラック・ナショナリズムと演劇(とくに20世紀モダン・パジェント運動)の事例については、ジャマイカの現地調査にて、昨年度のニューヨークの図書館には所蔵されていなかった資料および現地の演劇人や研究者との意見交換などの機会を得られたことは、本研究を進める上で重要な通過点となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、今日各国で採用されている国立劇場制度と文化政策の生成と運営について、その①一国の近代化過程におけるナショナリズムと連動した政治的機能、および②インターナショナルな文脈の中で、自国のアイデンティティを確立・発信する文化的機能の二点を、複数のケーススタディを取り上げ、その個々の分析を通じて明らかにすることを目指している。 最終年度には、米国のケーススタディとして、モダン・パジェントの流行とナショナリズムの関連を調べるべく、社会思想家・活動家・社会学者として米国黒人の地位向上とブラック・ナショナリズムの生成に多大な影響を及ぼしたW.E.B.デュボイス(1868-1963)が著したパジェント二作品―『エチオピアの星』(1913年初演)と『ジョージ・ワシントンと黒人』(1932年出版)―の分析を進める。
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Research Products
(3 results)