2016 Fiscal Year Research-status Report
後期モダニズム文学・文化における越境性ならびに集団性に関する研究
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26770107
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
秦 邦生 青山学院大学, 文学部, 准教授 (00459306)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | モダニズム / 後期モダニズム / ユートピア / ディストピア / 映画 / アダプテーション / 第二次世界大戦 / 初期冷戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1930年代の英文学を中心に「後期モダニズム」の概念を多角的に検討することで、従来の文学史・文化史観を「後期帝国主義」の文脈から修正することを目的とするものである。この研究計画の3年目にあたる2016年度では、研究の対象を①第二次世界大戦時から冷戦初期におけるジョージ・オーウェルの後期モダニズム、②1930年代から40年代のアダプテーション映画に絞って、より多角的な観点から研究と資料収集を継続した。 第一に、初年度に口頭発表をおこなったジョージ・オーウェルの『1984年』における後期モダニズムと、その第二次世界大戦期から冷戦初期にかけての「ユートピア的転回」に関する研究を英語論文としてまとめ、海外の学術誌に投稿した。これは修正を経て採用となり、現在、2017年度内の刊行を目指して、最終的な調整がすすんでいる。 これと並行して、第二次世界戦後の福祉国家と「後期モダニズム」の問題をよく反映するものとして、1947年に映画監督デイヴィッド・リーンがチャールズ・ディケンズの小説を翻案して作成した映画『オリバー・ツイスト』に関して史料収集と分析を行い、口頭発表ならびに論文を作成した。これは2017年度中に刊行予定の論集にて活字化される予定である。リーンの映画においては、表現主義的な映像表現が、物語におけるヴィクトリア朝の伝統の見直しと共存しており、「モダニズム」の歴史的転回の一例として興味深い実例であることが論証できた。また、2015年度に手を付けた1930年代のアルフレッド・ヒッチコックによるスパイ小説アダプテーションに関するケーススタディは史料収集と分析を継続した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まだ刊行はされていないが、オーウェルの『1984年』論は英語で、ならびに、リーン監督の『オリバー・ツイスト』論は日本語での論文を執筆し、どちらも2017年度中の活字化についてある程度目途を立てることができた。また、2015年度末に当初予定していた海外資料調査は、予定通り2016年度夏に実施することができたため、2017年度中にその分析を進め、論考としてまとめることにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画当初は1930年代に焦点をあわせる予定だったが、途中から30年代の時代状況を、40年代・50年代との通時的変化の文脈において理解することの重要性を再認識し、第二次世界大戦や初期冷戦期の文化・政治状況を視野に入れつつ、これまでに扱ってきた作家・テクストについても広い文脈での再検討をおこなってきた。また、「後期モダニズム」の事例研究とその比較対照による枠組みの検討をおこなうために、特に文学と映像をまたいだインターテクスト性を重視した研究をおこなってきた。研究4年目にあたる本年度においては、新しい事例研究に乗り出すよりは、こうした研究の積み重ねを総合して、「後期モダニズム」に関する総合的な見地をまとめ、論文執筆におもな時間を割くことにしたい。
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Research Products
(3 results)