2014 Fiscal Year Research-status Report
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26770110
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
宮澤 直美 京都産業大学, 外国語学部, 助教 (50633286)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 銀板写真 / 19世紀 / アメリカ文学 / 視覚芸術 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、米国ロチェスター大学George Eastman House Library Rare Books、ニューヨーク公立図書館Stephen A. Schwarzman Buildingでの調査を中心に、ほぼ計画通りに順調に研究を進めることができた。1840年代の銀板写真家が残した作品や当時の新聞記事など貴重な資料を数多く収集した。また肖像画家と銀板写真の関係性など、研究開始当初視野に入れていなかった点の重要性を再認識する発見もあり、本研究がさらに大きく前進する可能性を感じる大変意義ある資料調査となった。特に、ポーとも親交が深かった画家トーマス・サリー、ロバート・サリーの資料をニューヨーク公立図書館で読むことができたことで、当時の肖像画と銀板写真との関係性に新たな視点を見出すことができた。銀板写真のみならず、視覚芸術というより広い視点から今後の研究を進めていくべく、軌道修正をして、今後の研究を進めていく計画である。また、ニューヨーク州立大学バッファロー校での指導教官であったデイビッド・シュミッド教授、また博士論文審査委員のキャリー・ブレイメン教授と会い、研究に関して多くの助言を得られたのも大きな励みとなった。 夏以降、持ち帰った資料の分析と論文執筆に取り掛かった。本研究は、19世紀前半のアメリカ文学に銀板写真が与えた影響について、ホーソーン、メルヴィル、ポー、エマーソン、そしてファニー・ファーンら女流作家らの作品、手紙、手記を通じて明らかにすることを目的としているが、現在執筆中の論文はホーソーンとポーを中心に銀板写真との関係性を考察するものである。動物磁気学と銀板写真の関連性を両作家の作品を通じて論じると共に、ポー作品における死者の蘇りや反復といったテーマを銀板写真、肖像画をとりまく当時の言説と併置させて分析し、新たな解釈の可能性を提示することを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年8月の渡米調査では、資料館の図書館司書の方々からの強力なサポートを得たおかげで、予想以上に短期間で効率的に資料収集をすることができた。本年度は研究計画通りに進めることができ、ほぼ目標通りに達成できたため②を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、今後も研究計画の予定通りに推進していく。平成27年度の当初の計画は、作品分析を進めつつ、それを包括的に網羅する作業に移行することであった。現在執筆中の論文では、すでにホーソーンとポーを中心に作品分析作業に着手している。この論文で両作家についてまとめた後に、メルヴィル、エマーソンなどの作品分析に移行していく計画である。同時に、エミリー・ディキンソンやホイットマンなど写真に強い関心を示していた作家を視野に入れて検討していく必要性も感じている。計画よりも早く研究が進めば、これらの作家をも分析対象に取り込み、より包括的な視点で19世紀アメリカ文学と写真との関係性を論じたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2度の渡米を予定していたが、1度の渡米になったため、旅費が予定よりも減少した。またアメリカにおいて資料館の司書が無料で資料をデジタル化し提供してくれたため、資料複写、複写作業に見込んでいた複写費や人件費などの費用を施行せずに済んだことも経費を繰り越す理由の一つである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定よりも、多くの図書資料を必要としている現状にあるため、図書の購入に多くを当てたいと考えている。
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