2016 Fiscal Year Research-status Report
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26770110
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
宮澤 直美 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (50633286)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 銀盤写真 / エドガー・アラン・ポー / 肖像画 / フィラデルフィア / 視覚芸術 / 19世紀アメリカ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
米国雑誌Poe Studies: History, Theory, Interpretation(イェール大学出版)に投稿していた英語論文が査読審査を通り、平成29年3月に2回目の修正作業を終え、平成29年度中に出版されることが決定した。エドガー・アラン・ポー研究の国際的学術雑誌として権威ある本雑誌への掲載は、本研究の大きな成果と言える。 本論文は同時代作家ナサニエル・ホーソーン、ラルフ・ウォルドー・エマソン等の先行研究を踏まえた上で、1840年代のフィラデルフィアにおける銀盤写真家、肖像画家、そして作家エドガー・アラン・ポーの関係性を新たな歴史的資料に基づいて論じたものである。平成26年度及び27年度のロチェスターのジョージ・イーストマン・ハウス貴重書図書館、イェール大学美術館、ニューヨーク公立図書館貴重書部門、フィラデルフィア等での渡米調査によって得られた一次資料の分析が大きく貢献していることは言うまでもない。また査読過程で指摘された文献を精読することによって、当時の銀盤写真に関して最新の研究を踏まえた多角的な視点を持つことができたことは、本研究を進める上で大きな助けとなった。哲学や心理学と視覚芸術論を結びつける先行研究を読んだことで、本研究を進めるうえだけでなく、今後の研究の方向性を考えていくうえでも大きな示唆を得ることができた。 本研究は、19世紀前半のアメリカ文学に銀盤写真が与えた影響を検証することを目的として進めてきたが、本論文の掲載によって、上に挙げた作家についての検証は概ね計画を遂行できたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅延の主な理由としては、米国雑誌に投稿していた英語論文の査読1次審査への修正に平成28年夏季休業中のほとんどの時間を費やし、2度目の修正に最後の数ヶ月を要したことがある。掲載に非常に近いレベルにあるという評価ではあったが、さらに参照すべき文献が20冊以上リストアップされており、それらを読み、より精密な分析を加えた上での再提出が求められた。このため夏季休業中に予定していた米国調査を取りやめ、加筆修正作業に専念した。結果として、本論文で扱ったポー、ホーソーン、エマソンらの作家に関しては概ね計画通りに研究を進めることができた。しかしその反面、計画していた他の同時代作家(ウォルター・ホイットマンや同時代の女流作家)に関しては十分な研究に着手することができなかった。 本研究は、19世紀前半の作家と銀盤写真の関係を包括的に分析することを目的とするため、これまでの研究で論じた作家以外についても取り上げて検証する必要性のある作家が多く存在している。以上の理由の他にも、その他の業務の多忙さもあり、これらの作家についての検証が予定通り進んでいないことから、(4)「遅れている」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
写真に強い関心を寄せていた詩人ホイットマンと、周辺の女流作家に焦点を当てて文学作品と写真の関係を分析していく。最終年度に当たるため、19世紀の写真に対する文学作品の反応の特徴を掴み包括的な結論が出せるよう努力する。文学と絵画、写真といった視覚芸術が相互に影響を与えながら、時代を表象する媒体として、同時に新たなものの見方を模索する一例として本研究を位置づけることを目指す。
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Causes of Carryover |
米国雑誌に投稿していた英語論文の加筆修正作業に専念するために、予定していた米国調査を取りやめたことが、30万から40万円を予定していた旅費分の執行費を次年度に持ち越す原因になった。本論文に予想外の時間を要したため、執筆を計画していた他の論文に着手する時期が大幅に遅れ、予定していた英文校正費などの執行もできなかった。他方、論文修正にあたり、新たに参照すべき文献が増加し、急遽購入することになった書籍が膨大な数に増えたため、図書費の執行額は大幅に増えたという一面もある。しかしながら、総じてみると平成27年度からの繰越し金分もあり、執行費を次年度に残す結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの研究で時間を割くことができていない作家・詩人、特に詩人ウォルター・ホイットマンと、周辺の女流作家に関する調査を進める。そのため必要な文献を収集する。ホイットマンは写真に強い関心を示した詩人であるが、ロマン主義から写実主義への転換期を生きた詩人に写真が与えた影響を調査することから始める計画である。平成29年夏までの間に文献を読み、その過程で渡米調査の必要性が強くあると判断した場合には、夏季休業中に渡米調査を行う。夏以降は、ここまでの研究で掘り下げて論じることのできなかった作家に関して論文執筆を進め、最終年度のまとめになるような業績が残せるように努める。
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