2014 Fiscal Year Research-status Report
日系アメリカ文学にみる環境思想―食と農業を中心に―
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26770114
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Research Institution | Yonago National College of Technology |
Principal Investigator |
早水 英美 米子工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (90512252)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 環境文学 / 日系北米文学 / エコクリティシズム / 有機農業 / フードシステム / 食の正義 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、アメリカの食と農業をめぐる諸問題についての資料を収集し、それに関連するエコクリティシズムの理解を深め、作品分析に援用することを目標とした。 研究成果としては、昨年度のエコクリティシズム研究学会年次大会におけるワークショップ「American Literatureのエコクリティシズム特集号をめぐって」で、ジャネット・フィスキオのフードシステム境界の往来者たちの可能性を探求した論文を取り上げ、検討した原稿を改稿し、『エコクリティシズム・レヴュー』No.7に特集の一部「エコクリティシズムを揺るがす」として掲載された。また、最新のエコクリティシズムを実践するヘザー・ハウザーの論文を纏め、同ジャーナルに特集の一部「驚異的な馴染みなさ」として掲載された。さらに、フィスキオの議論を借用してオゼキの作品分析を試みた。オゼキの描く登場人物がフードシステムの往来者として支配する側にどのように抵抗しているかを考察する発表「アメリカの不自然な食べものをめぐって」(第113回アジア系アメリカ文学研究会例会 於名古屋大学5月17日)および「アメリカのフードシステムとオゼキの作品」(第27回エコクリティシズム研究学会年次大会 於神戸市立外国語大学8月9日)を行った。加えて9月には、本研究課題達成のための現地調査として、アメリカの大学図書館や関連施設を訪れた。この調査中にアイダホ大学のスコット・スロヴィック教授を訪ね、アメリカが直面している食の問題や現代環境文学の傾向と特徴、日系を含むアジア系作家と食との関わりについて教示いただいた。また、オゼキが在籍しているブルックリン・禅センターでは、同館のスタッフの協力を得てオゼキの作品に影響を与える禅思想の資料を得た。11月には、オゼキとデイヴィッド・マスモトの食への意識を比較する発表「日系アメリカ人作家における桃の象徴性」(中・四国アメリカ学会第42回年次大会 於広島修道大学11月29日)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカでの現地調査は、アイダホ大学のスロヴィック教授との面談だけでなく、ブルックリン・禅センターへの訪問等計画していた以上に進み、収穫を得た。またスロヴィック教授をはじめとするエコクリティークとの交流が深まり、次年度アメリカで開催されるEleventh ASLE Biennial Conference, 2015で発表することとなった。これも渡米の成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は今年度に引き続き、広島大学図書館や国会図書館で資料収集を行う。また研究代表者が今年度訪れ、次年度に学会発表が決定しているEleventh ASLE Biennial Conferenceの開催地アイダホ大学モスコー校でも、最新のエコクリティシズムおよび環境文学に関する資料の調査・収集を行う。さらに今年度学会等で発表したものを論文として書き直すとともに、次年度の調査結果を学会等で発表する。作家へのインタヴューについては、作家と研究代表者の都合が合わないことと体調不良の関係で、当初の計画を変更し、日系作家ヒロミ・ゴトー氏を日本へ招聘する。日本カナダ文学会やエコクリティシズム研究学会、広島大学等の協力を得て、ゴトー氏の特別講演等を企画する。
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