2014 Fiscal Year Research-status Report
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26770120
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
三田 順 北里大学, 一般教育部, 講師 (20723670)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 受容研究 / ベルギー:スロヴェニア:オーストリア / 象徴主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
世紀転換期の中欧、特にオーストリアのウィーン及び当時オーストリア帝国の支配下にありながら、自立的な近代文芸の誕生しつつあったスロヴェニアにおいてベルギー象徴主義がどのように受容されたのかを明らかにするにあたり、初年度となる本年度は、基礎調査を中心に行いながら、現時点での一定の成果を形にすることができた。 計画通り、まずはウィーンにおける受容状況の調査を行い、ベルギー象徴主義文学を代表する作家達のフランス語作品が同時代のドイツ語圏でどの程度翻訳紹介されていたのかを調査し、そこで好まれた作家、紹介された作品の傾向を大まかに把握することができた。同時に、翻訳状況の分析ではドイツ、オーストリア、スイスと言った広く「ドイツ語圏」での受容状況を把握するに留まる為、本年度後半から個々の作家における受容状況の調査を開始した。中でも自ら翻訳者としてベルギー象徴主義文学の紹介に携わったシュテファン・ツヴァイクに注目し、彼が残した豊富な書簡資料を手がかりに、彼がベルギーという国とその複雑な文化状況をどの程度理解していたのかを調査し始めた。その成果の一部はベルギーで開催されたベルギー研究会ブリュッセル国際大会(2015年3月4日)で発表した。 スロヴェニアにおける受容については、文献調査を中心に行い、世紀転換期のスロヴェニアにおける文壇状況の理解、および後に国民的作家と評価される象徴主義作家イヴァン・ツァンカルと外国文学との関わりについて調査を進めている。「スロヴェニア文学の受容」をテーマとして11月にリュブリャーナ大学で開かれた国際シンポジウムでは、日本におけるイヴァン・ツァンカルの受容について研究発表する機会を得、スロヴェニア文学についての理解を深めると共に、他の研究者の発表から受容研究を行う上で多くの有意義な示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究の土台となる文献収集、先行研究の調査を中心とする計画であったが、国際シンポジウムでの発表、論集への掲載等、一定の成果を発信することができた。同時に、これまでの調査から新たな課題も見つかり、若干アプローチの修正が必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は具体的に作家レベルでの調査を進め、特にベルギー象徴主義の作家と親しく交わり、評論の他、私信も多く残っているシュテファン・ツヴァイクのベルギー観、彼が友人でもあったエミール・ヴェラーレンの評価の内実を明らかにする。また、ベルギー象徴主義作家達との関わりが彼の文学作品にどのような影響を与えているのかも検討したい。その他、イヴァン・ツァンカルとモーリス・マーテルランク、ポール・ジェラルディーとホーフマンスタールとの関係を調査対象として予定している。
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Causes of Carryover |
26年度末に行った国外出張旅費が26年度の残額のみでは不足しており、27年度分の科研費と合わせて執行予定であるため。実質的に未使用額は0である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の通り、26年度末の国外出張の未処理分に充てる。
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