2014 Fiscal Year Research-status Report
グリム兄弟編『メルヘン自注』全3版の基礎的研究――協同の実態について
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26770121
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
横道 誠 京都府立大学, 文学部, 講師 (60516144)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グリム兄弟 / 文献学 / ゲルマニスティク / 学問と政治 / ナショナリズム / 学際性 / 国際性 / 伝承研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は計5本の論文(その内1本は紙幅の問題から分割して掲載したため計4件)を発表し、計2回の全国学会での発表をおこなった。 研究実施計画は、バジーレのヤーコプ・グリムへの影響を『メルヘン自注』と他の著作から探り、その上で弟のヴィルヘルム・グリムへのペローの影響との共通点および相違点を考察するというものであった。前者の課題は日本ジェンダー学会第18回大会(京都大学、9月20日)での口頭発表と、これを加筆訂正した論文(『日本ジェンダー研究』18号、2015年9月刊行予定)、そして紀要論文(『京都府立大学学術報告・人文』66号)でおおむね果たされた。後者の課題は、彼らの恊働の実態を、他のさまざまな仕事もふくめて考察した上でなされるほうがよいと判断し、以下の研究をおこなった――『歌謡エッダ』関連(『AZUR』7号と次年度の4月に私家版として刊行した『研究報告――2014/15』で論文を分割発表)、ロマニスティク側からのグリム批判関連(京都府立大学で10月11日におこなわれた日本独文学会全国大会での口頭発表と、その前半部を大幅に加筆した前出の私家版収録の論文)、さらにヤーコプとロマニスティクとの関係関連(次年度の2015年5月3日におこなった説話・伝承学会での口頭発表)である。 次年度以降の研究計画は前倒しされ、その内容の一部は前出の『日本ジェンダー研究』掲載論文でも公表されている。その他、2015年8月におこなわれる国際学会での口頭発表(XIII. Kongress der Internationalen Vereinigung fuer Germanistik, Shanghai 2015)の準備をおこなった(応募・採用済み)。 2014年8月には国立ベルリン図書館でグリム兄弟の遺稿を調査した。その内容の一部も前出の紀要論文や説話・伝承学会での口頭発表で公表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記したとおり、本年度の研究計画はおおむね達成されたが、ヤーコプ・グリムに対するバジーレの影響とヴィルヘルム・グリムに対するペローの影響を対照する作業は、彼らの仕事の全体像を把握した上でなされるほうが妥当との判断から、これを先送りし、逆に、研究計画を補完・深化させる内容の研究を進めるという方策を取った。結果として、初年度において計5本(分割掲載したものがあるため計4件)の論文を発表し、全国学会での2回の口頭発表をおこなった。なお、ヴィルヘルム・グリムに対するペローの影響に関する論文自体は研究計画が採用される以前に2014年の『説話・伝承学』22号に掲載されており、つまるところ比較対照の研究そのものも終えているわけである。機会をあらためて比較対照をおこなう予定である。 次年度の研究計画にあたるグリム兄弟と法制史との関係についての研究は前倒しで進めており、『日本ジェンダー研究』掲載論文(2015年9月刊行予定)にはその内容の一部を取り入れている。 予備研究の蓄積があったために、それが研究計画と調和し、公表された論文と口頭発表につながったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前倒しで開始した次年度の研究をさらに進める。法制史関係の資料を整備し、これまでの予備研究と結合させて、引き続き精力的に論文を執筆していく予定である。 また、これまでに河野眞教授(愛知大学)、金城ハウプトマン朱美博士(ゲッティンゲン大学で博士号取得、ベルリン在住)、植朗子研究員(神戸大学)、出口菜摘准教授(京都府立大学)から研究協力者として貴重な意見をいただく機会を得ることができた。日本のグリム研究を代表するひとりである野口芳子教授(武庫川女子大学)にも意見交換の機会を繰り返し与えていただいた。今後とも、多くの研究者と意見を交わしあい、研究を深めていきたい。 2015年8月には上海の国際学会(XIII. Kongress der Internationalen Vereinigung fuer Germanistik)で発表をおこない、海外の研究者と学術交流をおこなう予定である。国内学会での口頭発表も目下準備中である。
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Causes of Carryover |
必要な文献を海外から取り寄せるのに日数を要するため、次年度に購入のための予算を回すのが妥当であると判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
必要な文献を購入する経費に当てる。
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