2015 Fiscal Year Research-status Report
近代フランスにおける「公」と「私」の空間:文学、美術、建築の創造的発展
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26770122
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
福田 美雪 (寺嶋美雪) 獨協大学, 外国語学部, 専任講師 (90632737)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近代フランス文学 / 近代フランス絵画 / 近代フランス建築 / エミール・ゾラ |
Outline of Annual Research Achievements |
主に前年度からの継続課題である、19世紀における文学テクストと視覚芸術の相互的発展について研究を進めた。 年度の前半には、「文学と建築の創造的発展」について、とくに文学とパンテオンの関係に着目し、文学者や作品の「列聖」がパンテオンという建築によって視覚化されるという19世紀的現象を明らかにした。まず、「人文社会系セミナー」(2015年7月5日)において、「時代を予見する文学者、エミール・ゾラ」と題し、19世紀のパリ・パンテオンが担う歴史的重要性、およびドレフュス事件後のゾラのパンテオン移葬が示す象徴的意味について発表した。また、「世界文学研究会」(2015年8月2日)において、「フランス文学におけるカノンの形成」と題し、「文学のカノン」という概念と「パンテオン」という建築物が照応することを示しつつ、国家主導による文学者の「列聖」が、19世紀のモニュメント(パンテオン、国立図書館など)や私的建築(書斎など)の発展と並行して進められたことを明らかにした。 年度の後半には、19世紀における文学テクスト(草稿を含む)とイマージュ(絵画、写真、版画、デッサン)の拮抗関係、および両者の融合について調べた。論文「君の削除箇所を読め:小説家ゾラの準備ノート」(白百合女子大学アウリオン叢書16号、2016年5月刊行予定)においては、ゾラの『ルーゴン=マッカール叢書』(1871-93)の根幹をなす「文学的モニュメント」という企図が、草稿やデッサンを通じてどのように実現されたかを、最終巻『パスカル博士』(1893)を例に挙げて論じた。また、獨協大学インターナショナル・フォーラム「見えるを問いなおす―アート、イメージ、テクスト」(2015年12月11日、12日)に参加し、コーディネーター兼パネリストとして、19世紀フランスの視覚文化について総括を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度においては、19世紀の文学・絵画・音楽の結節点となるパリ・オペラ座というモニュメントを中心に研究を進めたが、新たに「パンテオン」に着目したことで、近代芸術におけるカノンの形成と、そのイメージの視覚的な再創造、拡散のシステムがより具体的に浮かび上がってきた。 さらに、獨協インターナショナル・フォーラムの準備、およびロール・シュワルツ=アルナレス教授(東洋美術史研究)とのパネルディスカッションを通じて、ルーヴル美術館というモニュメントが、美術のカノンの形成と異文化の受容という両義的な機能を果たしていることが明らかになった。本研究のテーマである、「近代フランスにおける文学、音楽、絵画、建築の創造的発展」の歩みは、歴史的文脈に即して確実に照らし出されてきたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
文学と視覚芸術の結びつき、および文学と建築の結びつきについて、それぞれ総括を行う。現時点では、「19世紀における文学と写真」および「19世紀における文学と美術館」という内容で、論文を準備中である。これまではエミール・ゾラの作品を中心に分析していたが、時代をより幅広くとり、写実主義から象徴主義に至る第二帝政、第三共和政の文学作品を取り上げていく予定である。また、今年度は出産のため、フランスでの調査や学会出張の計画が実施できなかった。これらの計画は平成28年度に繰り延べ、とくに近代のモニュメントに関する文献資料を重点的に収集し、発表やワークショップに活かすこととする。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた調査や学会のための出張が取りやめとなり、確保していた旅費が不要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の繰り越し分は、旅費に繰り入れ、出張費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)