2017 Fiscal Year Research-status Report
近代フランスにおける「公」と「私」の空間:文学、美術、建築の創造的発展
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26770122
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
福田 美雪 (寺嶋美雪) 獨協大学, 外国語学部, 准教授 (90632737)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 近代フランス文学 / 近代フランス美術 / 近代フランス建築 / 私的空間 / エミール・ゾラ |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度には、主に19世紀フランスに発展した写真術と芸術表現の影響関係、および19世紀後半の印象派芸術と文学の関係について研究を進めた。 具体的には、過年度に進めてきたフィリップ・アモン氏の『イマジュリー』(共訳)を脱稿するとともに、「科学者の暗室」や「芸術家のアトリエ」の表象について、写実主義から自然主義の小説と、同時期の絵画との比較を行った。とくにダゲレオタイプの発明以降、ナダールの航空写真や肖像写真、地下写真などの様々な試みにより、科学的な記録のためのツールであった写真術が、印象派に代表される革新的な視覚表現へと発展し、多くの文学テクストもまたイメージの焼きつけ、複製、再創造をライトモチーフとしていることが明らかになった。 2017年秋には、小説家エミール・ゾラと画家ポール・セザンヌの作品創造をめぐる芸術観の対立を描いた映画「セザンヌと僕」(邦題「セザンヌと過ごした時間」)が日本で公開されたことにあわせ、新潟大学フランス学研究会では、「自伝かモデル小説か― 『制作』をめぐるゾラとセザンヌ」と題した招待講演を行った。 また、昨年度より「パンテオン」を手がかりに、建築と文学の影響関係についても調べてきたが、1908年のエミール・ゾラのパンテオン葬をとりあげ、第三共和政におけるパンテオン葬の政治的意味合いや、ドレフュス事件をめぐるゾラのテクストが政治的ディスクールやカリカチュアなどの視覚イメージにどう関係しているか、さらには20世紀以降の共和主義・人道主義的文学にどのような影響を与えたかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたフランスへの資料収集のための調査が、家庭の事情により実施できなかった。しかし国内学会、シンポジウムへの参加は予定通り行った。 2017年度に執筆を予定していた論文、原稿は、おおむね年度内に発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
海外への調査、学会発表が実質的に行えない時期が長引いているため、それに代わる活動として国内での学会・シンポジウム参加を精力的に行う。
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Causes of Carryover |
2017年度に予定していたフランスへの資料収集・調査のための出張が実施できなかったため、その分を次年度使用額に繰り越すこととなった。なお、計画の変更は、第二子妊娠というやむを得ない事情によるものである。
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Research Products
(2 results)