2018 Fiscal Year Annual Research Report
"Public" and "private" spaces in Modern France. -- Creative development of literature, fine art and architecture
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26770122
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
福田 美雪 (寺嶋美雪) 獨協大学, 外国語学部, 准教授 (90632737)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 近代フランス文学 / 近代フランス美術 / 近代フランス建築 / 絵画 / 写真 / アンティミテ(親密性) / 自然主義 / エミール・ゾラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近代フランスにおける「公」と「私」の空間が、個人や特定の集団の「親密さ」を希求して形成され、構築されてきたこと、またその進化は文学や絵画における私的空間の表象に読み取れることを考察してきた。 これまで、第二帝政期のオスマン大改造による都市の近代化や、19世紀パリで行われた5度のパリ万国博覧会などの歴史的事象が、市民生活における公共空間と私的空間の形成に大きな影響を及ぼしたことを、エミール・ゾラの『ルーゴン=マッカール叢書』や、マネから印象派、そしてナビ派へと至る絵画芸術等を通して論じてきた。 しかし、1870年の普仏戦争敗北と第二帝政崩壊、そして第三共和政成立の経緯を調べる過程で、文学史、美術史、建築史上においては連続的な発展が認められるにせよ、第三共和政以降の社会におけるナショナリスムの高揚や、敗戦からの復興、反ユダヤ主義をめぐる政治的な分断は、芸術表象における「親密さ」の概念にも影響を与えていることを無視できないのではないか、という新たな疑問が生じた。 普仏戦争敗北後、フランス固有の美学を求めたナショナリスト・保守的傾向のある芸術家グループと、敗戦を招いた政治体制批判を創作の原動力とした共和主義的な芸術家グループには、美学上の協同・競合関係だけではなく、思想的・イデオロギー的な対立も認められる。その結果、1870年代以降の芸術表象における「親密さ」には、個人の内省を追求する方向と、他者との調和を目指す方向に、ゆるやかに分岐していくと考えられる。 今後、1870年から71年を、文学・絵画・建築における「親密さ」の概念のターニングポイントと位置づけ、より多角的な考察を展開していきたい。
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