2015 Fiscal Year Research-status Report
第1次ロマン派からランボーに至る近代叙情性と「私」の考察
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26770123
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
深井 陽介 東海大学, 外国語教育センター, 講師 (60623410)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ランボー / ミュッセ / ユゴー / 主体 / 自伝 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、2015年3月5日にフランス・パリ高等師範学校において発表した「自伝のフィクション化」を出版する為、論文にしてシカゴ大学パリキャンパスの編集部に送った。この内容は書籍として2016年度中にフランスで刊行される予定である。ランボーがミュッセを嫌っていたのとは裏腹に、実は自己の矛盾や分裂という共通のテーマを持っており、その文体にも類似の箇所が見られることを明らかにした点で、19世紀フランス文学に新たな視点を見出すことができた。次に、第一次ロマン派の自伝性を分析するために、自伝に関する研究書『自伝』(Jacques Lecarme・Eliane Lecarme-Tabone, Armand Colin, 2004)や『フランスにおける自伝』( Philippe Lejeune, Armand Colin, 2014) などを参照しながら、第一次ロマン派を「主体」という観点から捉え直す研究を行った。また、ユゴーの『静観詩集』の分析に入った。これは、第一次ロマン主義文学における「主体」を再考するという意義がある。その際『ヴィクトル・ユゴーにおける抒情的主体の詩学』(Ludmila Charles-Wurtz, Champion, 1998)など、当該分野に関する最新の研究書を参考資料とした。この研究は現在も継続中であり、2016年度の『東海大学外国語教育センター紀要』や日本フランス語フランス文学会・秋季大会で発表される予定である。尚、研究の方向性や妥当性に関しては引き続きパリ第4大学のミシェル・ミュラ教授から貴重なご助言を頂いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年30回程度の公務出張に伴う補講をしなければならなかった為、教育業務が大幅に増えた上、同僚の不慮の死によりその分の学内業務・授業も補わなければならなくなってしまった。また学外のフランス語弁論大会に出場する学生の指導もしなければならず、これら全ての業務に大幅な時間を割くことを余儀なくされた。通常であれば、ユゴー・あるいはラマルチーヌに関して新たに論文1本を書き上げる予定だったが、研究の途中で年度が終了してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で、ランボーとミュッセの自伝的作品における比較研究と、19世紀におけるロマン派受容に関わる研究、19世紀における抒情性の概念の把握は終えている。2016年度は本研究の最終年に当たるので、特にユゴーとラマルチーヌの自伝的作品の研究に絞って論文を書く。また、2016年10月に行われる日本フランス語フランス学会などでその成果を報告する予定である。夏季・冬季の授業のない期間も利用して、年度末までには少なくとも論文を2本完成させる。
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Causes of Carryover |
本年度に購入しようとしていたノートパソコンの費用が、大学から奨励賞に基づく研究奨励金(東海大学松前重義記念基金・牧野不二雄奨励賞)で賄えたため、本年度の科研費からは使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額はロマン主義関連図書を拡充するために使用される予定である。また、国内学会・研究会参加、フランスでの研究調査も引き続き行うので、それに必要な旅費・消耗品の購入費として使用させて頂く予定である。
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