2014 Fiscal Year Research-status Report
各種韻文の社会的機能に着目した東晋の文人・湛方生の詩文と長江流域文化に関する研究
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26770129
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
渡邉 登紀 日本大学, 生物資源科学部, 専任講師 (50632030)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 湛方生 / 陶淵明 / 東晋文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究課題は、「湛方生詩文訳注の作成および韻文形式の検討」。当初の予定では、湛方生の検討を中心に据える予定であったが、湛方生詩文の母胎となる文学的土壌を明らかにすることが先決であると考え、同時代人の陶淵明の詩文の考察に重心をおいて考察を進めた。具体的な成果は以下の通りである。(なお、湛方生の詩文訳注についても、京都大学人文科学研究所等で文献調査を行い、引き続き整理・検討を行っている。) 1、各種韻文形式の持つ社会的機能の検討 現存する六朝詩の多くは四言詩、五言詩に集約されるが、東晋期にはさらに多くの韻文形式が存在し、それぞれの韻文形式にはそれぞれ異なる社会的機能を備えていたことが予想される。しかし、六朝に関する文献資料のその多くがすでに散佚しており、各種韻文形式の詩文はおろか四言詩や五言詩においても、当時の文学創作の場やその社会的機能が明らかになっていないものが多く存在する。そこで、『陶淵明集』に「答ホウ参軍」という同じ詩題をもつ四言詩と五言詩が存在することに着目し、この二つの詩および序の比較から、それぞれの詩がいかなる場で詠じられたものであるのかを明らかにした。その成果は、論稿「『二つの答ホウ参軍』について-陶淵明の交際と居住空間」(『人間科学研究』第12号)として発表した。 2、「擬古詩」の検討 陶淵明および鮑照の「擬古詩」に着目し、当時の詩人が想定する「古」とはいかなるものであったかについて考察を行った。その成果(中間報告)として、報告者が参加する研究会「読陶詩会」(大上正美氏代表)において、陶淵明「擬古詩」における作品解釈の報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東晋文学の中でも比較的まとまって資料が現存している陶淵明詩文の検討に重点を置いたため、東晋期における文学創作の場および個々の詩文が担う社会的機能の検討は概ね順調に進んでいる。一方、湛方生詩文の訳注の作成についてはいまだ資料整理の段階であり、訳注の発表という段階には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
湛方生、陶淵明といた東晋から劉宋を生きた長江中下流域の文人たちが、いかなる場で詩文を創作し、その詩文がいかなる社会的機能を有していたのかを探りたい。そこで、以下の二つの方面からのアプローチを行う。 1.訳注の作成 報告者が既に収集している資料を整理して、湛方生詩文の訳注の作成を行う。 2.モチーフの検討 湛方生の詩文の題材とされるモチーフが、湛方生と同時代およびその前後の時代の文人たちの詩文の中でいかに語られているかを考察する。
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