2015 Fiscal Year Research-status Report
古代中国文献に関する表現形式に基づく評価基準の構築
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26770131
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
鈴木 達明 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (90456814)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 淮南子 / 荘子 / 諸子百家 / 黄老 / レトリック / 表現形式 / 押韻句 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、対話型説話における演出的な記述(会話中の反応表現)・押韻句・定型的言い回しの三種の表現形式を主な調査対象としている。以下、それぞれについて、本年度の実績を述べる。 1.対話型説話における演出的な記述については、前年度の口頭発表に基づき、より詳細な他資料との比較・漢代文献への影響の考察などを加えて、論文として『日本中国学会報』上に発表した(内容等は昨年度の実績概要に準ずる)。 2.押韻句については、特に『淮南子』を中心に研究を進めた。『淮南子』は成立年代と地域がほぼ確定できる点で貴重であるが、多様な思想的要素を含む雑駁さのため、先秦道家や前漢儒家との関係性などの思想史的な位置づけにはなお問題が多く残っている。そこで本年度の研究では、『淮南子』に大量に見られる押韻句の使用法や、先秦道家文献との類似表現を鍵として分析した。その結果、『淮南子』において、先秦時期の黄老文献と重なる表現形式・術語・思想が見られるのは、現実的な技術(術数・兵法)が中心で、政治論や形而上学的記述には極めて少ないと言えること、それに基づき、前漢初期の「黄老」の文化的流行の中に『淮南子』を位置づけることが可能であると考えられた。この結果を「阪神中哲談話会第400回記念大会」にて発表した。ただ押韻句については、その使用状況と上記の区分との間に一定の相関性は見られるものの、なお検討の余地が残る。 3.定型的言い回しについては、技術文献を主な対象とするが、この1、2年の間でも多くの新しい簡帛資料が発表され、既出の資料の研究も多く発表されている。本年度は資料収集と読解を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に進めていた、対話型説話における演出的な記述に関する成果は、整理し論文として発表できた。遅れていた押韻句についても、『淮南子』を対象として、一定の研究成果は発表できた。一方で、押韻句についてなお考察の必要な部分を残したこと、「定型的言い回し」に関しては資料収集と読解にとどまったことから、全体としてやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
『淮南子』は多量の押韻句を含み、それゆえ内容との関連性の分析に困難があるものの、書中に散見される文学論的解釈が可能な記述と対照させることで、表現形式の思想的な背景や文学史的意義を捉えられることが強く期待される。そのため、『呂氏春秋』との比較は部分的なものにとどめるなど、進捗状況を勘案しつつ、もう少し検討を続ける。あわせて「定型的言い回し」の考察について、2015年度に読解した範囲に関して考察を進め、発表する。
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