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2014 Fiscal Year Research-status Report

英語疑似空所化の史的発達についての生成統語論的研究

Research Project

Project/Area Number 26770133
Research InstitutionUniversity of Tsukuba

Principal Investigator

山村 崇斗  筑波大学, 人文社会系, 助教 (30706940)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2017-03-31
Keywords疑似空所化 / 動詞句省略 / PF削除分析 / 英語の(前)助動詞 / 英語史
Outline of Annual Research Achievements

本年度は、動詞句省略と空所化の両方の特質を示す英語の疑似空所化について、特に動詞句省略との関連に注目し、(1)古英語における分布の調査、および、(2)PF削除を仮定した削除分析による分析を行った。(1)に関しては、前法助動詞と本来共起する語彙動詞が省略された事例を史的電子コーパスを利用して調査し、動詞句省略および疑似空所化が様々な節タイプ、様々な前法助動詞の事例が確認された。Levin (1980)では語彙動詞doの用法から疑似空所化が発達したと主張されているが、助動詞doが確立する15世紀以前の古英語での疑似空所化の存在が確認され、疑似空所化の史的発達のシナリオの再検討の必要性が示唆された。(2)については、「時制素性がフェイズ主要部vに導入される言語では動詞句省略が認可される」というRouveret (2012)が提案した動詞句省略へのPF削除分析を援用し、疑似空所化の統語分析を試みた。古英語において動詞句省略および疑似空所化が前法助動詞の補部で生じているデータから、伝統的には一律語彙動詞として扱われてきた前法助動詞には、既に古英語において機能範疇vに基底生成される機能語として用いられる場合があったと言える。古英語ではa)基底語順がVOの時、否定目的語が左方移動しOV語順が、b)基底語順がOVの時、否定目的語以外の目的語が右方移動しVO語順が得られた(Pintzuk and Taylor (2006))。古英語の疑似空所化の残余は、これらの方略により比較的自由にVP外へ移動したが、基底語順がVOで、OVの表層語順がない現代英語では、b)だけでなくa)の方略も利用できない。これは否定目的語の左方移動の消失に伴い、vのFocus素性が消失したからである。現代英語の疑似空所化では右方移動のみが関与することになるが、具体的なメカニズムや史的変化については次年度以降の課題である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度は計画通り、語順が比較的自由であった古英語における疑似空所化を対象に史的電子コーパスを利用した調査を行った。これに加え、古英語における動詞句省略の事例の調査も行うことで、前法助動詞に関わる省略構文の実態を包括的に理解することができた。動詞句省略の史的研究に関しては、5月に行われた日本英文学会全国大会のSYMPOSIAに講師として登壇し、研究成果を発表した。さらに研究成果をまとめた論文が筑波大学人文社会学研究科現代語・現代文化専攻の紀要「論叢 現代語・現代文化」に掲載され、10月に出版された。ここまでの研究から明らかになった(前)法助動詞の形態統語的性質に関して、10月に行われた日本英文学会中部支部大会シンポジウムに講師として登壇し、口頭発表した。動詞句省略構文と(前)法助動詞の形態統語論的性質に関する一連の研究と史的電子コーパスを利用した疑似空所化の調査の結果を、11月に行われた日本英語学会秋季大会のワークショップで講師として登壇し、口頭発表した。

Strategy for Future Research Activity

次年度以降は、語順が固定され始めた時代の疑似空所化の史的電子コーパスを利用した調査を進める。これと並行して現代英語の疑似空所化に関する母語話者への聞き取り調査を開始する予定であるが、聞き取り調査への取り掛かりには若干の遅れが予想される。古英語や中英語でも現代英語と同様に、語彙動詞の補部の省略を許さないことを明らかにするための調査を優先して行うためである。この件に関しては、史的電子コーパスの検索結果では支持されてきたが、以下の問題点があった。1)「省略現象である」ことを示すタグはあるが、「省略現象ではない」ことを積極的に示すタグはない。2)母語話者がいないため、作例による直接確認ができない。これらの問題に、現在であれば省略現象が見られる疑問文を史的電子コーパスによって列挙し、電子コーパスに収録されたテキストの原典で当該の疑問文に対する応答文を確認するという作業で対応する。
本年度の動詞句省略および疑似空所化の統語分析と(前)法助動詞の形態統語論的性質に関する一連の研究から、動詞関連の省略だけでなく、名詞句内省略への示唆も多く得られており、本研究課題の研究成果の省略現象全体への拡張の可能性が見られる。これに関して7月にイタリアで開かれる国際学会ICHL22で発表予定である。

Causes of Carryover

本年度は予定していたパソコンの購入を予算が不足し、見送ったため、次年度使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

次年度では、データの管理や論文作成のために購入を予定していたパソコンを購入する。

  • Research Products

    (4 results)

All 2014

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] Reconsidering the Development of English Modals: With Special Reference to VP-ellipsis2014

    • Author(s)
      Yamamura, Shuto
    • Journal Title

      論叢:現代語・現代文化

      Volume: 13 Pages: 17-36

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 英語疑似空所化の史的統語変化2014

    • Author(s)
      山村崇斗
    • Organizer
      日本英語学会 第32回大会 ワークショップ
    • Place of Presentation
      学習院大学 (東京都豊島区)
    • Year and Date
      2014-11-08
  • [Presentation] 動詞句省略構文の分布と英語助動詞shall/canの史的発達2014

    • Author(s)
      山村崇斗
    • Organizer
      日本英文学会中部支部 第66回大会 シンポジウム
    • Place of Presentation
      中京大学名古屋キャンパス (愛知県名古屋市)
    • Year and Date
      2014-10-24
  • [Presentation] 英語史における助動詞後位省略現象について2014

    • Author(s)
      山村崇斗
    • Organizer
      日本英文学会 第86回大会 SYMPOSIA
    • Place of Presentation
      北海道大学 (北海道札幌市)
    • Year and Date
      2014-05-24

URL: 

Published: 2016-06-01  

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