2015 Fiscal Year Research-status Report
数の仕組みとその文法・情報構造との連関の通言語的研究
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26770135
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
野元 裕樹 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (10589245)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 態 / 定性 / 特定性 / 接語重複 / 動作主 / 情報構造 / マレー語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、私が提案した、伝統的な単複二項対立に代わる、4 範疇から成る基本的数範疇体系(単数[1]、2 種類の一般数[1 以上]、複数[2 以上])の仮説の妥当性を以下の3 つの観点から論証・検証することである。①一部の言語の複数形に見られる特定性(specificity)に関わる特徴が、類別詞を含む表現にも見られるかを調べ、類別詞を数標示と分析できるかどうかを明らかにする。②「一般数」を表す表現を認定するための通言語的に有効な客観的手順を確立し、一般数に2 種類あるのかどうかを明らかにする。③4 範疇仮説に基づき、文法・情報構造に関わる現象を捉え直し、伝統的数体系による記述と説明力を比較する。 今年度は、①と③に関わるような研究を進めた。昨年度は現代マレー語の受動文動作主の分析が中心であったが、今年度はさらに古典マレー語にも対象を広げた。古典マレー語には、動作主の表示が2度行われる、現代マレー語にはない現象があり、ここに定性・特定性が関わっていることを、いくつかのテキストの実例約1,000例を調査することにより、発見した。さらに、この特徴を一般言語学的なコンテクストに位置づける試みも行った。具体的には、ロマンス諸語やバルカン諸語に見られる、直接目的語の接語重複と類似することがわかった。接語重複という文法現象は、直接目的語の場合だけでなく、受動文の場合にも定性・特定性という情報構造と連関するということである。この連関が生じるメカニズムについては、先行研究はほとんどなく、受動文の関与の事実は、その解明に役立つはずである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数の仕組みについては、研究の中心からそれてしまっているものの、文法構造と情報構造の連関に関するあらたな言語事実がわかった。これは、当初の研究目的に含まれる特定性に関するものであり、研究全体としては順調な成果をあげていると言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度発見した言語事実とその一般言語学的位置づけ・説明について、さらに精緻化し、論文の形にまとめて投稿する。それが終わった時点で、数の標示との関連を本格的に調べ始める。並行して、研究に必要なコーパスとそのアノテーションの準備を行う。
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Causes of Carryover |
文献調査が基本となる古典マレー語を中心に研究していたため、その分の現地調査が必要なかった。また、研究発表を行った国際学会の1つが自校にて開催されたため、旅費がかからなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
6月に国際研究集会、The 23rd Annual Meeting of the Austronesian Formal Linguistics Association (AFLA)を主催するので、その運営にあてる。
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Research Products
(8 results)