2014 Fiscal Year Research-status Report
インド北東部におけるラルテー語の記述言語学的な研究
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26770136
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
大塚 行誠 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (90612937)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ラルテー語 / インド / ミャンマー / 記述言語学 / チン語支 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラルテー語は,シナ・チベット語族チベット・ビルマ語派チン語支北部チン語群に属し,その周辺言語にはティディム・チン語(北部チン語群),ミゾ語(中部チン語群),アショー・チン語(南部チン語群)などがある。Ethnologueによれば母語話者の人口は九百人程度であり,チン語支諸言語の中でも消滅の危機にある言語のひとつである。ラルテー語の記述言語学的な研究およびその記録を目的として本年度も調査を進めた。 具体的には,平成26年度は,本格的なラルテー語の調査を始めるにあたって,上記の周辺言語3言語に関する資料を読み,言語調査を進めた。そして,主たる研究対象であるラルテー語については,インド共和国のミゾラム州でメイン・インフォーマントと今後の調査の進め方と研究結果の話者コミュニティーへの還元について話し合った後,基礎語彙調査を行った。また,基礎語彙の調査が終わると,ミゾラム州一帯に伝わる童話,"Chemtatrawta"(刀を研ぐ男)のラルテー語バージョンを収録したほか,ラルテー語の伝統的な歌謡の録音も行った。 平成26年の8月と9月のフィールドワークでは,Asho Chin Baptist Conference とアショー・チン言語文化委員会による協力のもと,ミャンマー連邦ヤンゴン市インセイン地区でラルテー語の周辺言語である,アショー・チン語とミゾ語の基本的な文法事項に関する聞き取り調査をした後,両言語に関連する資料を収集した。また,平成27年3月には,インド共和国ミゾラム州のアイゾール市にて,ミゾラム大学ミゾ語学科とミゾ語協会の協力のもと,ラルテー語話者コミュニティーの紹介を受け,ラルテー語とミゾ語についての基礎的な調査を行った。 現在は,以上のフィールドワークで得られたデータをもとに,ラルテー語の音韻体系および基礎語彙集とテキストを執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度はラルテー語の周辺言語に関して十分に調査を進めることができたほか,インド共和国ミゾラム州においてインフォーマントと今後の指針について話し合いながら,ラルテー語の言語調査を進め,文法記述に必要な言語データを収集することができた。今後参照文法書を執筆していく為,また,アーカイブスに言語データを登録していく為の基礎となる言語データが収集できた点において,研究がおおむね順調に進展したと言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度にフィールドワークで得たラルテー語のデータをもとに,ミゾ語やティディム・チン語をはじめとする周辺言語のデータと対照しながら分析し,現在はラルテー語の音韻体系,語彙,および基本的な文法構造に関する論文を執筆している。今後,更なるラルテー語の文法記述を進める上で,ラルテー語における中動態標識や動詞語幹の形態など,文法上興味深い現象に関して,国内外の学会や研究会,ワークショップなどで積極的に報告を行おうと考えている。そして,幅広い分野の研究者からの指導やコメントも得たいと思っている。なお,文法記述の上で不足している言語データを補う為,更なるインドおよびミャンマーでのフィールドワークも検討している。
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Causes of Carryover |
当初計画していた物品,デジタル一眼レフカメラを購入しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度ではカメラが研究に必要となるため,購入する予定である。
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