2015 Fiscal Year Research-status Report
インド北東部におけるラルテー語の記述言語学的な研究
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26770136
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
大塚 行誠 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (90612937)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 記述言語学 / ラルテー語 / チン語支 / ミゾラム |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度,インド共和国ミゾラム州におけるフィールド調査で得られたラルテー語の基礎語彙と昔話のデータをコンピューター上で編集し,主に音韻と形態素の面から分析を行った。その成果の一部は東京大学言語学論集や『アジア・アフリカの言語と言語学』を通して公開したほか,ラルテー語の調査結果を参考にしながら,近隣のチン語支言語のひとつであるアショー・チン語に関する論文もNorth East Indian Linguistics, Volume 7に投稿している。 ラルテー語の音韻および語彙を調べるとともに,ミゾ語やティディム・チン語,アショー・チン語をはじめとした近隣の言語との共通点や違いを明らかにする事ができたことで,ラルテー語の言語調査が今後は更に順調に進むだろうと考えられる。 さらに,本年度3月にはインド共和国のミゾラム州アイゾール市にて再度言語調査を行い,基礎語彙リストの最終チェックのほか,ミゾ語の文法書,辞書,初等学年が使う教科書等を用いながら基本的な文法事項に関する聞き取り調査を行った。前年度には詳しく聞く事の出来なかった人称標示体系,動詞語幹の形態的な特徴,テンス,アスペクト,ムードに関しても調べる事ができ,本格的な文法記述に向けた調査が始動したと言える。 ミゾラム州内の公用語であるミゾ語の強い影響を受け,アイゾール市内でラルテー語話者が減している状況は本年度も変わっていない事が現地調査で分かっている。特に現地ではドキュメンテーションや言語再活性化の動きも見られない。来年度もラルテー語の文法を言語学的な観点から体系的に記述し,その研究成果を広く一般に向けて公開していくことで,インド北東部における少数言語の研究モデル構築を目指していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インド北東部ミゾラム州での聞き取り調査および参与観察を通して,ラルテー語およびラルテー語話者の社会・文化に関して調べを進めている。一方,日本国内では,ミゾラム州内で記録した各種データの整理,書き起こし,編集および分析を行いながら,海外の研究機関にある国際的なデジタル・アーカイブに言語資料を提供していけるよう準備を進めている途中である。現地での更なるフィールドワークが必要な事から「やや遅れている」と本年度の進捗状況を評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は,記述言語学的な手法を用いてラルテー語を調査し,文法書,語彙集,テキスト集を作成していく事である。今後は数回のフィールドワークを行いながらデータで不足している部分を補って文法書を完成させる予定である。 なお,申請者がラルテー語の資料を保存および公開することで,国内外の研究者あるいは現地の話者コミュニティーとデータを共有することも本研究の主たる目標である。これを実施するにあたって,今後は危機言語を保管・公開する他のデジタル・アーカイブへの登録と運営者との連絡を密に行い,データの提供を進めていきたいと考えている。
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