2016 Fiscal Year Annual Research Report
Descriptive Studies of the Ralte language in Northeast India
Project/Area Number |
26770136
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
大塚 行誠 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (90612937)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ラルテー語 / チン語支 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラルテー語は,シナ・チベット語族チベット・ビルマ語派チン語支北部チン語群に属する。ラルテー語の母語話者は九百人程度であり,チン語支諸言語の中でも消滅の危機にある言語のひとつと言える。3年間に渡るインドでの調査では,ラルテー語話者自身も,ラルテー語を使用する機会が激減したことで,自らの言語と文化の消滅を危惧している様子がうかがえた。 2016年度の現地調査は,2月下旬から3月上旬にかけてインド共和国のミゾラム州アイゾール市ボンコーン地区で行った。ラルテー語話者とのインタビューによる基礎語彙調査と文法調査を更に進めながら,ミゾ語・ヒンディー語・英語の対訳会話集を使って,言語データを増強することに専念した。文法調査では,動詞語幹の形態統語的な特徴およびボイスについて詳細に調べることができ,文法記述と辞書作成に更なる弾みをつけることができた。国内では,東京大学言語学論集(電子版)にて『ラルテー語の人称標示』と題した論文を発表し,ラルテー語の人称標示について,周辺言語であるミゾ語やティディム・チン語との対照的な観点から考察した結果を公表した。現在,フィールドワークで得られたデータをコンピュータ上で編集しながら,ラルテー語の形態統語に関する論文の執筆と研究会発表の準備を続けている。 2016年度時点においても,ミゾラム州内の公用語であるミゾ語の強い影響を受けたラルテー語の言語状況は変わっておらず,現地の話者コミュニティでもラルテー語に関する調査・研究が進んでいないことが分かった。昨年度と同じく,ドキュメンテーションや言語再活性化の動きも見られなかった。 今後もこれまでに得られた言語データを精査しながら,ラルテー語の音韻および文法を記述言語学的視点から体系的に記述し,その研究成果を広く一般に向けて公開していきながら,インド北東部における少数言語の研究モデル構築を進めていく予定である。
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