2014 Fiscal Year Research-status Report
モダリティ表現の特徴及び分布: 機能範疇・補文標識の役割の視点から
Project/Area Number |
26770138
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
宗像 孝 横浜国立大学, 国際戦略推進機構, 講師 (70637941)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | モダリティとモーダル基盤 / 理論言語学 (生成文法) / 統語論 / 比較研究 / 補文構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、モダリティ表現を要求する主動詞と補文構造内における周縁機能範疇及びモーダル基盤 (modal base) と主動詞の関係に主眼を置いて、分析を進めた。特に、モーダル基盤の中で、義務的解釈をもたらす規範的モーダル基盤と可能性解釈をもたらす認識様態モーダル基盤に着目した。主文において、「法律を基に」などの副詞句を用い、規範的モーダル基盤を設定した場合、義務解釈を表す「べき」が許されるのに対し、「専門家の意見を基に」などの副詞句を用い、認識様態モーダル基盤を設定した場合、可能性解釈を表す「はず」が許されることを示した。 次に、主動詞とモーダル基盤・周縁機能範疇の関係を明らかにするために、日本語でモダリティ表現を要求する動詞の選別を行い、「宣告する」などの動詞が補文構造内にて規範的モーダル基盤を要求し、義務的解釈になり「べき」を選択するのに対し、「信じ込む」などの動詞が、認識様態モーダル基盤を要求し、可能性解釈になり「はず」を選択することを明らかにした。更に、Saito (2013) の補文構造の分析を援用し、モダリティ表現を要する動詞と補文構造内部の周縁機能範疇の関係について精査し、「の」を主要部とするFinPではモーダル基盤を認可できないことを明らかにした。又、「か」を主要部とするForcePと共起できないことを示し、Portner (2009) が提案したように、モーダル基盤のタイプの決定には、Clause Type/Sentential Forceを認可するForceが要求されるので、ForcePを含むCPの最大領域が必要とされることを明らかにし、「か」が生じると、モーダル基盤の値が設定できないため、非文になることを示した。 本分析はPortnerが示す普遍文法の性質と合致し、日本語の分析から他のアジア諸語に援用できるものであり、今後の進展が期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本語のモダリティ表現に基づき、モダリティ表現に与えるモーダル基盤の影響を基に、モーダル表現を要求する主動詞とモーダル基盤の関係の研究を進めることにより、モダリティ表現の特徴の一端を明らかにした。又、補文構造の周縁機能範疇とモーダル基盤の認可及びモダリティ表現の解釈と関係する周辺機能範疇の役割を分析し、モダリティ表現の解釈に必要な条件の一端を提示した。この分析でモダリティ表現を要求する動詞と補文構造内における機能周縁範疇との関係を分析を進めたことにより、モダリティ表現の統語構造上の特徴を明示した。以上のように、一定の研究成果が見られ、本研究プロジェクトは順調に前進している。又、様々な文献を網羅して精査することにより、諸言語のモダリティ表現の特徴及び分布状況を幅広く収集し、比較統語研究を行うための研究基盤を蓄積した。次年度以降のアジア諸語を中心とする比較統語研究を進め、日本語のモダリティ表現を基にした文法を汎用させる準備を十分に行えたので、次年度以降の研究を円滑に進展させることが可能になった。 最後に、第149回日本言語学会にて、口頭発表を行い、本研究の成果を公表した。聴衆からの議論を基に、本研究プロジェクトの成果を深化することができ、次年度以降の研究につなげられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に構築した研究基盤を基に、以下の研究項目を中心に進める。 第一に、日本語の補文内におけるモダリティ表現の分布をまとめる。特に、モダリティ表現の分布を周縁機能範疇から定義する。同時に、モーダル基盤によって生じるモダリティ環境について、研究を進め、モダリティ環境の特質を整理し、モーダル基盤が周縁機能範疇に与える影響を明らかにし、周縁機能範疇の機能を究明する。その上で、モダリティ表現の特徴を解明する。二番目に、補文構造に表出する周縁機能範疇を再検討し、補文の内部構造を調べ上げる。伝統的な日本語における従属節分類の理論的根拠を探索する。加えて、モダリティ表現と周縁機能範疇の位置関係から、補文標識の根本的な特徴を明らかにする。最後に、前年度に蓄積した日本語及び諸語の研究資料を用いて、アジア諸語・台湾客家諸語を中心とした諸外国語と日本語の補文構造・モダリティ表現の比較統語研究を推し進める。特に、現地の研究者と交流し、必要な追加の言語資料を集め、普遍文法の視点から一定の提案を行う。 次に、海外から本研究に深く関係する研究を行っている著名な研究者1名と国内から研究者3名を招き、国際ワークショップを行う。他にも、国内から3名の研究者を招聘し、研究会を行う。研究会及び国際ワークショップでは、幅広い研究知見を得ることで、多角的に研究成果を検討し活発な議論を行うことで、本研究プロジェクトの大幅な進展につなげる。 最後に、文献及び電子媒体の研究資料を収集することで、最先端の研究知見を得るとともに、引き続きモダリティ表現が豊富な言語の調査も同時に進める。 本研究プロジェクトの研究成果を国内外に幅広く公表するために、学会にて主な成果を発表し、国際学術雑誌に論文を投稿する。加えて、ウェブページに本研究プロジェクトで最終的に得られた研究成果、論文、研究成果報告書等を掲載する。
|
Causes of Carryover |
研究会に招待する予定だった研究者の都合により、研究会で予定していた発表数が足りなかったために研究会が一度も開催できなかったことにより、人件費を使用しなかった。 又、本研究プロジェクトと緊密に関係する国際学会の日程が公務と重なってしまい、応募することが出来なかったため、研究口頭発表できなかったので、国際学会の発表を見送った。ゆえに、旅費を使い切ることができなかった。以上、二つの理由により、約30万円の次年度費用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に開催する研究会及び国際ワークショップの規模を大きくし、それぞれ招待する研究者を1名ずつ増やすことにより、人件費の使用額にあてる。加えて、国際学会で発表する機会を増やし、研究成果を公表する機会を増やすことで、旅費の使用額にあてる予定である
|
Research Products
(1 results)