2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26770148
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉山 由希子 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70525112)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 日本語アクセント / 劣化雑音音声 / 音声知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
劣化雑音音声とは、1)音声を複数の周波数帯域に分割した上で、2)それぞれの帯域ごとに振幅包絡を抽出し、3)1)で分割した周波数帯域ごとの雑音に、2)で抽出した振幅包絡を与え、4)最後に3)で作った周波数帯域ごとの雑音を合わせた音声のことを指す。このようにして作られる劣化雑音音声は、日本語アクセントの主な音響特徴である基本周波数(F0)を持たないため、それ以外にどのような音響特徴があるのかを検証するのに適している。自身のこれまでの研究により、日本語アクセントは、F0以外にも、アクセントに関する音響特徴を持っており、しかも、日本語話者はそれを手がかりとして単語を聞き分けることができることが分かっている。そこで本研究は、聴取実験により、その副次的な音響特徴が何であるかを定量的に示すことを目的とする。本年度は、主に次の作業を行った。 (1)単語、単語を読むキャリアセンテンスの選定、(2)劣化雑音音声(音声刺激)の元になる音声の録音、(3)全体の周波数帯域(特に上限)、(4)分割する帯域の数を検討・決定 当初は、周波数帯域ごとに作成した雑音を足し合わせてできた音声(冒頭の4)の音声に相当する)のみを実験で被験者に提示する予定であった。しかし、音声刺激を試作している段階で、周波数帯域ごとに分割された雑音(冒頭の3)に相当する)でもアクセントの聞き取りは可能であり、さらに周波数帯域によって聞き取りやすさが異なるであろうと推察された。そこで、実験では、3)と4)の両方を使って、著しくアクセント情報が失われた音声で、日本語話者がどの程度単語を聞き取ることができ、また何を手がかりとして聞き分けているかを検証することになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、平坦な基本周波数(F0)を用いた実験と、劣化雑音音声を用いた実験の2種類を行い、初年度は平坦なF0の実験を実施する予定であった。しかし、劣化雑音音声で被験者に提示する音声刺激を作成していた際に、先行研究などでは検証されていない音声の特徴に、単語を聞き分けるための手がかり(acoustic cue)が存在するかもしれないことが分かった。そのため、劣化雑音音声の実験で使う音声刺激を当初の予定よりさらに細分化させて、詳しく検証することとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
劣化雑音音声の実験を始める。実験は、必要なデータを一度で収集しようとすると、被験者1人当たり2時間以上かかってしまうので、それぞれの被験者から2回に分けてデータを収集する予定である。被験者の集まる8月上旬頃までをめどに、日吉キャンパスで東京方言話者を15-20名程度募って、第1回目のデータ収集を実施する。第2回目のデータ収集は、秋頃までをめどに行う予定である。
|
Causes of Carryover |
予定していたよりも短い時間でデータの分析が終わり、学生に支払う研究補助の謝金が減ったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の支出状況に応じて、適宜使用する。
|
Research Products
(3 results)