2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26770153
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
衣畑 智秀 福岡大学, 人文学部, 准教授 (80551928)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宮古語 / 係り結び / 不定 / 自然談話 / イントネーション / アスペクト / 活用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第一の目的は、消滅の危機にある琉球語宮古島北部方言について、次世代の言語研究にも資するような、文法書、語彙リスト、談話テクストを作成することである。また、本研究は、このような個々の方言の記述が、記述のための記述に終わるのではなく、一般言語学的な研究にも資するものであることを示すことを研究目標としている。 このような目的のもと、本年度は、沖縄県宮古島市において三度の調査を行った。その結果、これまでに収録できた自然談話計8時間のうち、約4.5時間ほどの書き起こしが終了し、かつ形態素や意味情報をテキストに付与することができた。これにより、言語研究を行うためのテキストとして十分な量を確保することができ、また、形態素・意味情報を付与しているため、語彙リストも容易に作成する環境が整った。さらに今年度は、これらの談話書き起こしの他に、イントネーション、存在表現、アスペクト表現、活用についての面接調査も行い、それに基づいて、三件の学会発表を行うことができた。語彙リストの作成や学会発表の論文化は、28年度に進めていく予定である。 また今年度は、二つ目の目標である一般言語学的な貢献について、二本の論文を執筆し、大きな進展が見られた。一つ目は、『日本語の研究』12巻1号に掲載された論文「係り結びと不定構文―宮古語を中心に―」において、係り結びの見られる言語・方言には、不定表現が見られにくいことを指摘したものであり、係り結びを持つ言語の類型的な特徴の一旦を明らかにしたものである。もう一つは、『言語研究』149号に掲載された論文「南琉球宮古語の疑問詞疑問係り結び―伊良部集落方言を中心に―」において、伊良部集落方言を中心に、宮古語諸方言の係り結びを記述したものであり、この研究の結果、本居宣長以来の問題となってきた疑問詞疑問における係り結びの機能について一定の解決を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、一般言語学への貢献という点については、学会誌に二本の論文が掲載され大きな進展が見られ、目標は達成されつつあると認識している。また、自然談話テキストについても、4.5時間分の書き起こしが終わり、語彙リストの作成の準備も整うなど順調に進んでいる。文法書の作成についてはやや遅れ気味であるが、個別に活用やアスペクト、形容詞の記述など進んでいる分もあり、これらを総合することで、今後進展が見られるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、27年度に行った学会発表の論文化を進める予定である。テーマとしては、27年度に引き続いて係り結びのほかに、活用、存在表現、アスペクト表現についても扱う予定である。27年度までで言語研究に必要な自然談話の収集・書き起こしが終わったため、28年度からは、面接調査を中心に調査を進めたいと考えている。文法記述のための諸項目の他に、以前から調査を進めているアクセント・イントネーション、指示詞、アスペクト表現について、重点的に調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初は沖縄県宮古島市に四回の調査を予定していたが、9月24~28日の調査が、台風接近のため、急遽取りやめになった。そのため、調査が三回になり、繰越金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年5月現在、日本語学会での資料収集のための研究者の派遣、及び研究発表会への方言研究者の招聘によって、10万円ほどを旅費として支出している。残りの6万円ほどは、今年度予定している三度の調査旅費として消費していく予定である。
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