2015 Fiscal Year Research-status Report
文章と発話の自発性からみた主語標示の助詞「が・の」の計量的研究
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26770155
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
南部 智史 津田塾大学, 学芸学部, 研究員 (40649000)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 格助詞 / 文法 / 変異 / 言語変化 / 社会言語学 / 心理言語学 / コーパス / 実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究実績は大きく2つに分けられる。 (1)コーパスを用いた研究 平成26年度に引き続いて、大正・昭和前期の発話データを収録したコーパス「岡田コレクション」を利用したコーパス調査を行なった。岡田コレクションは当初の研究計画提出後に利用可能となり、当初利用を予定していたコーパスよりも得られる成果が大きくなることが期待できたため、よい意味で計画を変更することができた。これまでの調査結果では、本研究課題の重要な部分を構成する言語変化について、その進行の段階を言語学的側面から明らかにすることができた。また、社会言語学的観点から、野村剛史氏の提唱する「日本語スタンダード」における変化と考えられる可能性を検討した。平成27年度はその成果の一部を第150回日本言語学会で発表することができ、平成28年6月には国際学会(Sociolinguistic Symposium 21, スペイン開催)で口頭発表を行なう予定である。さらに、これまでの成果は書籍の一部執筆として平成27年度に出版することができた(「従属節の主語表示「が」と「の」の変異」相澤正夫・金澤裕之(編)『SP盤演説レコードがひらく日本語研究』笠間書院)。 (2)心理言語学的実験からの研究 コーパス調査によって発見された当該現象に関わる諸要因のうち、主語と述部の隣接性は言語の認知処理に原因があるという仮説を立てて心理言語学的実験を行ない分析を進めた。その研究成果は第40回関西言語学会で発表することができた(共同研究者 甲南大学中谷健太郎教授)。また、平成27年度には国立障害者リハビリテーションセンター研究所にて招聘講演を行なった。このことをきっかけとして同研究所高次脳機能障害研究室との共同研究を開始し、当該言語現象に関して失語症と神経言語学の観点を取り入れることで研究の枠組みの拡張を行なうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は調査のため採用したコーパス「岡田コレクション」を用いることで順調に分析を進めることができた。心理言語学の知見をいかした実験においても、期待通りの成果が得られた。これらの成果は平成27年度に国内・国際学会での口頭発表で報告することができており、また、書籍での出版も行えたことから、研究は計画通り順調に進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の最終年度である平成28年度は、年度内にその成果を国際雑誌に報告することに向けてこれまでの研究を引き続き行なう予定である。コーパス調査に関しては、岡田コレクションから得られたデータ分析の継続とともに、限られた資料を用いた定量的分析の限界を踏まえつつ、今後の研究につながる提唱を行えるよう努める。心理言語学的実験については、国際雑誌への投稿論文に向けて共同研究者と予定を合わせてもう1つ追加で実験を行なう。また、失語症もしくは神経言語学の観点から研究協力者と議論を進めて年度内に実験を行えることを目標とする。
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