2014 Fiscal Year Research-status Report
シャドーイング法を取り入れた吃音者の音声知覚・産出メカニズムの解明
Project/Area Number |
26770158
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
阿 栄娜 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 流動研究員 (20710891)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 吃音 / シャドーイング / 非流暢性 / ワーキングメモリ / 潜時 / 音声知覚・産出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、発話に非流暢性が頻繁に生じる吃音者がシャドーイング(音声を聞きながら口頭で同じ発話をできるだけ早く再生する課題)を行う際の、音声の知覚・産出におけるメカニズムを解明し、吃音改善への効果を検証することを目的としている。 平成26年度は成人吃音者と非吃音者数十名を対象に、音韻構造や発話速度が統制されたモデル音声でシャドーイングによる発話実験を行い、基礎的なデータを収集した。収集したデータからシャドーイング中の非流暢性特徴や追唱潜時(モデル音声の提示から参加者が発話するまでの潜時)を解析した。実験の結果、音読で吃音の中核症状が多くみられる吃音者はシャドーイング中に吃音の頻度が大幅に低下し、流暢性が促進されることが明らかになった。この成果を日本吃音・流暢性障害学会と日本音声学会で発表し、論文にまとめたものが平成27年度に学会誌に掲載される予定である。追唱潜時に関しては、吃音者と非吃音者で分布が異なることを示した。 また、シャドーイング課題は音声の聴取と発話の並列処理が必要であるため、ワーキングメモリとも関連が深い。これらの関連を検証するために、ワーキングメモリの容量を測定するリーディングスパンテスト(以下RST)を実施し、吃音者と非吃音者の得点の差やテストで用いる方略の相違を分析した。吃音者の場合はRSTの得点とシャドーイングの追唱潜時の間で高い正の相関が見られるのに対し、非吃音者の場合は相関がなかったことが明らかになった。この成果を日本音声言語医学会で発表し、現在は投稿に向けて論文執筆中である。さらに、RST中に使用する方略の種類によって、テストの得点が変化することを日本ワーキングメモリ学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、当初設定していた以下の目標を順番に達成した:(1)シャドーイングによる音声知覚・産出を検証するプロトコールの作成、(2)シャドーイングによる発話実験のデータ収集、(3)音声データの非流暢性や潜時などを解析、(4)ワーキングメモリの容量の測定。 上記の目標達成過程で得られた成果を随時多分野の学会で発表し、一部の内容を論文にまとめ、学会誌に掲載されることが決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、(1)吃音者数名を対象に、シャドーイングを取り入れた長期訓練を実施し、訓練効果の持続性を検証する。これにより、シャドーイングを吃音改善に用いる新たな手法として普及させることを目指す。 (2)吃音者・非吃音者を対象に、fMRIやNIRSを用いた脳機能計測の実験を実施する。主に、言語に関わるブローカ野、ウェルニッケ野、角回・縁上回、運動野、運動前野、前頭前野、側頭葉の賦活を観察する。これらの部位における脳活動の特徴と行動実験(シャドーイング及びワーキングメモリの容量を測定する課題)の結果との関連を検証する。 (3)得られた研究成果は随時国内外の学会で発表し、学術学会誌へ論文投稿を行う。
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Causes of Carryover |
(1)購入予定であった録音・撮影機材は所属研究機関所有のものを使用したため、新たに購入しなかった。 (2)海外の学会へ参加を計画していたが、研究業務や国内学会の時期と重なったことにより、参加を取りやめた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は2件の国際学会:第8回国際流暢性学会(World Congress on Fluency Disorders)とInterspeech 2015で研究成果を発表する予定であるため、平成26年度に生じた残額を次年度に有効活用する。
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Research Products
(9 results)