2014 Fiscal Year Research-status Report
古代日本語表記における音訓両仮名の標準化と衰退及びその相関についての研究
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26770161
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
尾山 慎 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (20535116)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 訓字 / 訓仮名 / 音仮名 / 萬葉集 / 文字 / 表記 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、学術論文一編、口頭発表一件にまとめたものを成果として報告する。 まず、萬葉集において、ある文字が、訓字に使われるのか、音仮名につかわれるのかということを巡って、二合仮名を例にとって考察した(「萬葉集における用法としての文字選択とその表記」『萬葉集研究』第35集)。結果、二合仮名は、訓字と字母を共通するものが多く、その訓字を通して”音変換”して、使用されるものだということがわかった。音訓両用、交用というのはこれまでもよく論じられてきたところだが、現象として文字はそれ一つである。その文字をどう使うか、という事を巡っては、音訓をどう当時の日本人が認識していたかということにかかわってくる大きな問題でもある。本論はその一端を照射する成果であると考える。口頭発表では、「「正訓」を考える――萬葉集仮名主体表記歌巻における単音節訓字」を行った。ここでは、従来、仮名性を帯びるという位置づけがされていた単音節訓字をあらためて取り上げ、孤立的につかわれうる訓字と、他の訓と共起しないと使われないものとが存在することを示し、文字使用の、音訓の偏り、またその「読み」の定着性を測る一つの基準を提示した。この発表は、前記の論文に連続するものであり、やはり、当時の「音訓」意識(ヤスマロのいう音訓ではこの場合、ない)を知る一つの手がかりとなるであろうと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果の項に示したように、論文一編と口頭発表一件によって、計画時に示した予定の研究、考察はいまのところ順調に進んでいると考える。ただ、口頭発表のほうは巻17、18,20の調査がおわったところであるため、他の巻の調査は引き続き進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
音訓の問題で、現在の所は音仮名は二合仮名を中心に取り上げているので、二合仮名以外の調査も必要である。また、仮名主体表記における訓字の調査も、巻5などがまだ用例整理を終えていない。引き続きデータベースの作成と、充実化を図りたい。なお、巻17については、今夏、全国大会の学会で口頭発表する予定である(学会より、発表エントリー受諾済み)。席上の質疑応答を通して、今後の研究に活かしたいと思う。
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Research Products
(2 results)