2015 Fiscal Year Research-status Report
古代日本語表記における音訓両仮名の標準化と衰退及びその相関についての研究
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26770161
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
尾山 慎 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (20535116)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 訓字 / 正訓 / 仮名 / 萬葉集 / 仮名主体表記歌巻 / 一字一音 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、訓字が以下に定着訓を獲得しているか、またそのことの実証はどのように得られるかという方法論について研究し、結果、用例数カウントに依拠しない方法を確立することができた。 古代日本語における文字と訓の関係を問うことは、本科研課題にとって、根幹を成す課題であり、以下に述べるように、二編の学術論文および、一件の学会口頭発表によって相応の成果を得られたものと考える。まず、「萬葉集「正訓」攷」(『文学史研究』56 2016.3)では、正訓という術語の定義を再確認し、定着している日本語訓なるものが、いかに定位できるのか、問うた。用例数を数えるだけでは、文字と語の関係は問えないのであり、それとは違った方法で模索する必要があることをしてきた。これを受けて、学会全国大会にて「万葉集仮名主体表記歌巻における単音節訓字―巻十七を中心に―」(平成27年度 美夫君志会全国大会 2015.6.28)と題して研究成果を発表した。仮名主体表記中における一音節訓字を抽出し、音仮名という環境に囲まれながらも、訓として使用し得ていることをもって、文字と訓との定着度の測定基準にできることを指摘した。この方法によれば、用例数が多いものほど定着している、といった方法とは別に、たとえ一例であっても検査することができる。 ある文献にそれが多く現れる、ということは、その文字なり、読みなりが相応に社会的標準として位置づけられていることを示す場合もあるが、用例数が得られなければ行き詰まるし、また使用頻度が低いことの意味を問えないために、決定的な裏付けとはしがたい。その点、本研究で提示した方法は、これを克服することができると同時に、検証の別観点からの基準の一つにたてることができ、従来方法の否定の上にたつわけでない点で、建設的である。なお、本発表は、同名にて学術雑誌に発表し、掲載された(『美夫君志』92号 2016.3)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二編の論文および一回の口頭発表で、27年度の研究はおおむね順調に進展したことが示されたと考える。特に、口頭発表をへて、同学会に投稿した論文では、査読審査でほぼ意見が出ず、そのまま採用となった点から見ても、一定の評価をえられたものと自負している。
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Strategy for Future Research Activity |
萬葉集巻17についての発表を足がかりとしたので、他の巻にも方法論が応用できることを示したい。また研究最終年度にあたるため、古代日本語表記における文字と訓の関係、あるいは語と綴り(広義の仮名遣い)について、このたび報告者が考案した方法でもって新見が示せることを明らかにしたい。
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Research Products
(3 results)