2016 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of Linguistic Typology and Historical Change
Project/Area Number |
26770169
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
菅野 悟 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (80583476)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 英語学 / 統語論 / 生成文法 / フェーズ / 主語 / 一致 / 抜き出し |
Outline of Annual Research Achievements |
3年度目となる本年度においては、主語の特性に焦点を当てている。本研究はCPの持つ素性が果たしている統語的な働きを明らかにすることを目的とし、この研究目的を達成するうえで主語の特性(すなわち、統語上の位置、および、位置と解釈の関係など)を解明することが重要となる。 その主語の特性の中でも、本年度は特に、動名詞節(Gerundive clause)が主語の位置に生じる場合を考察した。一般に他動詞の主語句の内部からは抜き出しができないと考えられている。しかし、動名詞節が主語位置に生じる場合、抜き出しが容易になることが観察されている。先行研究において、このような抜き出しは、抜き出された要素と空所の間の距離(distance)が近い場合、認可されると説明され、このような抜き出し現象に対しては、文処理(parsing)の観点から主に説明が与えられている。しかし、本研究は、文処理上の観点における距離が問題なのではなく、統語的説明を試みている。本年度の研究から得られた結果として、wh句の解釈と埋め込みの有無が重要であることを明らかにした。 先行研究に対する反例となる事例はwh句とその空所が近い場合であれ、文法文となる事例が存在することである。このため、本年度の研究では、次に2点が文法性にかかわることを明らかにした。まず、wh句の解釈であり、wh句が談話連付け(Discourse-linked/D-linked)されている場合であれば、動名詞節主語の内部からの抜き出しが可能となる。次に、埋め込み節(embedded clause)内部の主語句からの抜き出しのほうがより文法性が上がる。 以上、本研究の3年度目においては、CPの素性という観点から動名詞節主語句の振る舞いを観察し、これを説明することを試みた。また、本年度の研究成果は"Extraction out of Gerundive Subject"としてまとめられている。
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