2014 Fiscal Year Research-status Report
身分・職業・役割を表す名詞から派生した動詞の英語史における統語・意味的変遷
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26770174
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
三浦 あゆみ 関西外国語大学, 外国語学部, 講師 (00706830)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 名詞派生動詞 / 品詞転換 / 英語史 / 統語 / 意味 / 身分 / 職業 / 役割 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、Levin (1993) において orphan verbs (cripple, knight, martyr, orphan, outlaw など) および captain verbs (butcher, captain, host, mother, referee など) として挙げられている、人を表す名詞から接辞が加わることなく派生した一連の動詞の英語史における用法の変遷を、Oxford English Dictionaryにおける引用文やコーパスから収集した用例に基づいて詳細に調査・分析を行うことで、近年盛んに研究がなされている、動詞の意味と統語法の相関関係の歴史の一部を明らかにすることを目的としている。これらの動詞群は伝統的に語形成の分野において研究されてきたが、その統語的用法や、orphan verbsとcaptain verbsの意味的区別の曖昧性については十分な関心が払われてこなかった。本研究は、先行研究におけるこれらの「穴」を埋めることに一つの大きな意義がある。また、コーパスを利用した先行研究が乏しいという背景を踏まえ、コーパスのデータを盛り込むことも本研究の重要な特色である。 当該年度は、先行研究の講読と並行して、研究の根幹となる、調査対象動詞のリスト作成とOEDの引用文の収集に専念した。また、途中成果をスイスの国際学会で発表し、聴衆から貴重なフィードバックを受け、本研究を国際的にアピールすることができた。年度末には研究代表者の母校であるマンチェスター大学(英国)へ出張し、3週間にわたって本研究関係の作業、特に同大学が多数擁している史的英語コーパスからのデータ収集に没頭した。また、出張中に行った学科セミナーでの招待発表では、スタッフと大学院生から成る聴衆から非常に好意的なコメントが寄せられ、本研究の意義と将来性を認められることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、実施期間を3年とする本研究の初年度にあたり、当初の計画では、(1) 関連文献の収集・講読、(2) OEDおよびコーパスからのデータ収集、(3) 国内外での途中成果の研究発表を予定していた。授業関連の諸々の作業や他の研究業績(特に、学位論文に基づく著書の出版)のため、授業期間中は本研究関連の作業に集中できない時期もあったが、1年という期間と年度全体の実績を総合的に考慮すると、当初の計画を十二分に達成できたと考える。(1)と(2)に関しては今後も継続するが、必要な文献やデータの多くは当該年度中に入手・構築を進めることができた。(3)に関して、国内では発表を行う機会がなかったが、国外での発表(スイスでの国際学会と英国での招待発表)はいずれも成功し、非常に貴重なフィードバックを聴衆から得ることができた。また、年度末に実現したマンチェスター大学への長期出張でも、受け入れを許可して下さったかつての指導教授の研究室で本研究関連の作業に毎日取り組み、研究を大きく進捗させることができた。旧所属学科のセミナーで行った招待発表後も、当日出席が叶わなかった一部スタッフと後日個別に意見交換を行い、有益な知見を得ることができた。これらの成果は、今後の研究の進展に確実に生かされることとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度で難航したのは、調査対象となる動詞の包括的なリストの作成だった。先行研究ではリストがなく一部の動詞のみが議論されているか、リストがあっても現代英語に残っているものに限定されており、本研究で求められる、廃語も含めて古英語から現代英語まで記録された、人を表す名詞から品詞転換によって生じた動詞のリストは、研究代表者が知る限りは存在しない。このようなリストを作成するにはOEDを活用するのが最も賢明だが、一般のユーザーがOEDから調査対象の動詞を抽出するのは容易ではない。品詞転換で生じた動詞を判別するタグの種類が一貫していないためである。当該年度は先行研究から手作業で収集した数百の動詞に、OEDを検索する中で個別に見つけたものを加えて暫定のリストとしていたが、幸いなことに、OEDに勤務する知人を通して、OEDに現在収録されている名詞派生の品詞転換動詞の包括的なリストをつい先日入手することができた。 このリストを元に、今後はまず調査対象動詞の最終決定を行う。入手したリストには人以外を表す名詞から派生した動詞が多く含まれているため、本研究の対象である、人を表す名詞から派生した動詞は手作業で抽出しなければならない。続いてOEDおよび近代英語期のコーパスからのデータ収集を完了させ、これまでの研究発表から得たフィードバックを元に、FileMakerで作成したデータベースの用例の詳細な分析を行う。近代英語期のコーパスに特化するのは、暫定のリストとOEDに基づく調査で、16世紀がorphan verbsとcaptain verbsの発展において転換期となることが分かったためだが、今後の作業で16世紀以前にも注目すべき時期があれば、その時代のコーパスからのデータ収集も行いたい。また、今後予定する学会発表の発表要旨を作成・提出し、本年度で本研究の暫定的な結論を導き出すことを目標とする。
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Causes of Carryover |
支給額を超えないように支出を慎重に管理したこと、年度末の英国長期出張のための費用を十分に残すべく留意したこと、同出張中はホテル滞在ではなく知人夫妻のご厚意でホームステイとなり宿泊費が一切生じなかったこと、2度の海外渡航のいずれも日当をあえて請求しなかったこと、人件費・謝金の支出が全くなかったこと、必要な文献の一部は図書そのものの購入ではなく相互貸借・複写や本学図書館に所蔵されているものを利用したこと、個人のパソコンなど一部の備品は既に本研究に取り組む前の段階で整っていたことなどが挙げられるが、これらの理由のいずれも、現時点での研究の達成度の遅れを示唆するものではない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会(英国・オックスフォード)および国内学会(岡山県)参加・発表のための出張費、本研究に関連した内容の書籍(和書・洋書)の購入、文献の複写費、各種消耗品の購入などに充てる計画でいる。
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