2014 Fiscal Year Research-status Report
フレイジオロジーの考え方を援用した英語の語彙補文・フレーズ補文の記述的研究
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26770175
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
住吉 誠 摂南大学, 外国語学部, 准教授 (10441106)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フレイジオロジー / フレーズ / 補文 / 補文の変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度は、研究実施計画に記したとおり、COCAなどのウェブコーパスやペーパーバックなどからフレーズ補文のデータ収集を集中的に行った。これは本研究課題にとって欠くことのできないデータであり、本研究課題が明らかにしようとする語彙補文・フレーズ補文について現代英語の実態解明の手がかりとなるものである。have in common + that 節や give + somebody + a hand + in V-ing / to V などこれまであまり注目されていなかった形を含めてさまざまなフレーズの補文の実例があつまっており、ほぼ予定通りに進んでいる。このような形は、本研究で語彙補文と呼ぶ *share + that節や help + somebody + (to) V などと比較を試みることで、フレーズ補文の特徴を浮かび上がらせることができると期待される。
2014年9月にフランスのパリで開催されたフレイジオロジーの国際学会である Europhras 2014 に参加し、フレイジオロジーの最新知見の獲得に努めた。また同学会で、本研究課題の内容の一部 (have in common + that節) にも触れながら研究成果を発表した。この発表の中で、連鎖の確立にしたがって、フレーズが品詞的な束縛から解き放たれ、比較的自由にさまざまな統語形式をとることを指摘した。
さらに give + somebody + a hand のフレーズ補文については、歴史的な英語の補文変化の流れ(that節→to不定詞→ V-ing) に沿う形で発達してきており、Great Complementation Shift の一例であると考えられる。この成果については、2015年8月にアメリカ合衆国で開催される B-ICLCE6 にて発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記した各年度ごとのスケジュール概要に沿って研究課題を進めており、初年度のテーマである<データの徹底収集>については、語彙補文・フレーズ補文含めて、順調に達成できている。特に help との比較を可能にする give somebody a hand にかかわる補文の実例を収集できたことは大きな進展であった。このように取集できた実例をもとに、従来の説やこれまでの研究成果との比較対象を行っており、研究計画2年目にはその成果を公にできるのではないかと考えている。
また、各出版物や関連する文献も収集しながら、学会参加による知見の吸収も予定通りに進めることができている。特に Europhras 2014 に参加し、最新の研究成果に触れられたこと、世界のフレイジオロジー研究者と意見の交換ができたことは非常に大きな意味があった。本研究の成果の一部をフレイジオロジーの国際学会で口頭発表し、各国の研究者からフィードバックがあったことも大きな成果である。また、本研究初年度の成果の一部について、2015年8月にアメリカで開催される国際学会 B-ICLCE 6 で発表が決定したことも、本研究課題が順調に進んでいることを示している。
コーパスなどを利用した語彙補文・フレーズ補文の発掘、フレイジオロジーの考え方を援用した補文の決定要因の考察、成果の発表など研究計画書の研究目的に記したことはほぼ順調に勧めることができている。今後もこの流れを乱さぬように研究計画に基づいて、着実に課題研究を進めていくことができるのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題2年目は、初年度に収集した語彙補文・フレーズ補文の分析を行う予定である。とくにRohdenburg が提唱した、それぞれの語彙が取る補部がある一定の流れで変化していくという Great Complementation Shift が、どこまでフレーズ補文に適用できるかは大きな関心事である。このことに着目することで、研究目的の一つである、補文の選択決定要因が意味的なものであるのか、フレーズとしての記憶によるものなのかを明らかにする一つのきっかけとなると考えられる。この点については、Rohdenburg のこれまでの論文や関連する他の研究者の先行研究などを集中的に収集、読み込むことで一定の進捗をみたいと考えている。
データの収集と分析は研究申請書に記したスケジュールに通りに進めることができているため、この流れをくずさずに2年目も文献収集や学会への積極的な参加などを継続しながら、研究課題を推進する。特にフレイジオロジー関係の学会・研究会や文献には注意を払いながら、最新知見の動向に遅れずについていくように努める。
また研究最終年度の研究成果交換に向けて、準備を進めていく。3年目はこの研究課題の総まとめを行う予定であるが、それにとどまらず、研究代表者がこれまで蓄積してきた研究成果と今研究課題をどのように統合し、どこまで現代英語の実態を明らかにできるのかを見据えながら2年目の研究を推進していきたい。
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Causes of Carryover |
研究初年度は旅費の割合が大きくなったため物品費の支出を抑えたことと、購入予定であった研究課題に関係する書籍が出版延期のため当該年度中に出版されなかったことなどから、2万円程度の差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
差額の2万円は、2年目の直接研究費の一部として物品費に使用する。特に出版延期された書籍が出版された場合の購入に充てるなどし、研究計画の円滑な実行と予算の健全な執行に努めるようにする。
2年目には、すでにアメリカで行われるB-ICLCE 6 の発表が決定しており、旅費への支出、関連書籍の購入など、予算を計画通りに執行していくことができると考えている。
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Research Products
(2 results)