2015 Fiscal Year Research-status Report
フレイジオロジーの考え方を援用した英語の語彙補文・フレーズ補文の記述的研究
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26770175
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
住吉 誠 摂南大学, 外国語学部, 准教授 (10441106)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フレーズ / 補文 / 推移 / 意味変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目では、本研究課題の大きな目的のひとつであったフレーズ補文を柱とする考察を行った。前年度にデータを収集することができたフレーズ補文のうち<take turns + to V/V-ing>、<give + X + a hand + to V/V-ing>、研究代表者の過去の研究に新たな追加データを収集できた <cannot bear + to V/that節> などについて、Rohdenburg (2006) が提唱する大補文推移 (Great Complement Shift) の観点から、補文の歴史的な推移を考察した。この結果、このようなフレーズはto不定詞からV-ingへと補文の構造を変化させているものが多いことを明らかにした。また、<take turns + 前置詞 + V-ing>のような形では、現在では前置詞を使わないことが圧倒的に多いことも判明した。この原因のひとつに、<have no idea (about) + wh-節> などの連鎖にも見られるように、補文の前に現れる前置詞が現代英語では省略される一般的な傾向があることが考えられる。これは、英語のパタンの確立や言語の経済性といった観点から説明できる。さらに、英語の一般的な大補文推移である to-不定詞から V-ing へという流れに反するような発達を見せている <cannot bear + to V> のようなフレーズ補文があることを指摘した。このような研究成果については、2015年アメリカで開催された 6th Biennial International Conference of Linguistics of Contemporary English にて口頭発表を行った。
本研究課題のもう一つの柱である語彙補文についても notice のデータを集中的に見直し、この動詞が日本の英語教育で言われるような <be + noticed + to V/V-ing> の形に生じにくい事実を指摘した。このような事実について、notice の意味とVに現れる動詞の意味的特徴との関係にもとづいて説明を試みた。この成果は2016年4月発刊予定の、『談話のことば2 規範からの解放』に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を進めるうえで最も肝要なデータの収集については、研究計画書にあるように、ペーパーバックをはじめとする印刷物、webで公開されているCOCAなどのコーパスを使用して予定通りに進んでいる。フレーズ補文は、大規模コーパスからもデータの収集が難しいものがあるが、複数のコーパスや印刷物を地道に見ていくことで、一定数の蓄積ができた。
また、研究書の渉猟についても、フレイジオロジーの最新知見を扱ったもの、英語を言語学的に分析した書籍など順調に進んでいる。それらの書籍を読み解くことで、英語研究の最新の成果を参考にしながら研究課題に取り組むことができており、順調に進んでいると考えられる。
研究計画に予定していたように、研究1年目、2年目において多くのフレーズ補文を発掘し、その実態を、自ら収集したデータやコーパスデータをもとに明らかにすることができた。また、従来言われてきたような補文に関わる過去の「定説」についても見直しを進め、現代英語における notice の補文の実態を解明できた。研究計画に予定していた通り、このような成果の一部を海外の学会で口頭発表し、今後の研究の課題などを含めて聴衆と議論できたことは一定の成果であると考える。またこのような成果の一部を、研究最終年度に刊行予定の著書に取り込む形で執筆を進めていることなども、本研究課題がおおむね順調に進展していると判断できる理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
フレーズ補文にかかわるデータの収集は今後も継続し、最終年度においても新たなフレーズ補文の発掘を進めていく。一部の研究者が主張するように、英語の大部分が定型表現から成り立っているのであれば、このようなフレーズの実態を明らかにすることが、すなわち英語の実態を明らかにすることにつながる。フレーズ補文の解明については精力的に行いたい。また、これまで日本の英語教育の中で、補文にかかわるいくつかの事項は「定説」として受け継がれてきた。研究2年目で明らかにした、知覚動詞 notice にかかわる語彙補文のあやまった認識のほかにも、observe などの補文パタンについての誤解がある。このような補文パタンは、海外の英語研究者の間でも意見の一致を見ておらず、データにもとづいた解明が待たれるところである。フレーズ補文だけでなく、語彙補文についても精力的に見直しを行いたい。
上記のような方針にもとづいて、より具体的には、最終年度前半において、研究初年度に収集した observe や assist の語彙補文の実態を明らかにすること、感情表現にかかわるフレーズ補文の実態を明らかにすることを進めていく。
さらに、研究最終年度は、2年目でアメリカで口頭発表したフレーズ補文の成果を何等かの形で公刊することを目標とする。これまでの他の研究者の意見をまとめながら、2年目で明らかにした成果加えて、一般に還元できるような形でまとめたい。また、本研究課題の成果を含めて、代表者のこれまでの研究成果を著書の形で出版する。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた文法化についての書籍が出版中止となり、消耗品費の一部が未使用となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由で未使用となっている額については、次年度に関連する他の書籍の購入に充てる。
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Research Products
(2 results)