2015 Fiscal Year Research-status Report
戦後の日本語教育の位置づけと「発展」への過程―政策と教育実践の関連をふまえて
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26770181
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
川上 尚恵 神戸大学, 留学生センター, 講師 (60507713)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 技術研修生 / 留学生 / 日本語教育 / 短期間 / 実用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度までに行った留学生受け入れの諸問題及び政策に関する研究をまとめ、技術研修生(以下研修生)に対する日本語教育に関する研究に着手した。戦後の日本語学習者の大きなグループとしては、留学生と研修生が挙げられ、研修生に対する日本語教育をテーマとすることによって、留学生教育における日本語教育との対比も行うことができ、戦後の日本語教育を包括的に論じることができると考える。 技術研修生に対する日本語教育の中でも、最も早くかつ組織的に日本語教育を行ったのが海外技術者研修協会(1959~2012)(The Association for Overseas Technical Scholarship、以下AOTS)である。まず、資料によりAOTSの日本語教育実践を調べ、その理念、目的、カリキュラム、実際の日本語教育活動を把握した。AOTSでは、1961年度に5週間コースのカリキュラムが定着し、1962年に初の教科書を出版した。その特徴としては、5週間という短期間、そして5週間後に始まる研修での実用的な日本語能力が求められたということであった。また、教師に対するトレーニングや実践研究を促す組織的な取り組みがあったことが注目される。 一方で、AOTSが作成した一連の初級日本語教科書4冊に分析を加えた。AOTSの初期の教育実践の中心であった「基本文型」と「実用会話」の二つの要素を軸とし、「基本文型」と「会話」の変遷を分析した。文型については、全段階において改変率は比較的高く、教科書の改訂の都度「基本文型」の見直しが行われていたと思われる。初期の教育実践における「実用会話」は、談話の構成や自然会話を意識したものではなかったと思われる。会話にも文型中心の考え方が反映されており、その後、コミュニカティブアプローチ等の知見を取り入れ自然さが加わったがやはり文型が中心であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画においては、(1)日本の政策と国際関係、(2)日本への技術研修生・留学生受け入れの経緯と実態、(3)日本語教育の「問題」への対応、といった3つの大きな課題を設けたが、本年度は(2)の留学生受け入れにおける経緯と実態をふまえた上で、留学生教育における(1)と(3)についてまとめた。また、(2)のもう一つの課題である技術研修生について調査を開始しし、(3)について分析を始めたところである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の課題を軸として、技術研修生に対する日本語教育の実態解明に向け、引き続き資料収集及び分析を行うとともに、関係者へのインタビューを実施する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は10月より産前産後の休暇・育児休業からの職務復帰をしたため、計画の変更があった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料分析補助のための人件費、物品費に使用し、資料調査・学会発表のための旅費に使用する。
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Research Products
(2 results)