2016 Fiscal Year Research-status Report
新しい英文読解テスト開発に向けた基礎的研究:字義的理解を超えた深い内容理解の測定
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26770188
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
高木 修一 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (20707773)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 言語テスト / 受験者の認識 / イベント構造の理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は大きく2つに分けられる。1点目は実験研究の実施、2点目は関連する研究の進捗である。1点目の実験研究の実施について、前年度に立案した研究計画に基づき、実証実験を実施した。日本人大学生を対象として英語の説明文を読解させ、日本語要約課題に取り組ませた。イベント索引化モデルの仮定する5次元の理解を含め、先行研究で実施されている様々な採点方法に基づいて評価し、それぞれのスコアの関係性を検討した。その結果、様々な採点方法で算出されたスコアにはいずれも r = .70程度の相関があることがわかった。アイデアユニットの算出数による字義的な採点方法と、マクロ命題の算出数というより深い理解の採点方法間にも同様の相関が見られたことは想定外の結果であった。この理由として様々な可能性が考えられるが、日本語要約課題のパフォーマンスは要求されるパフォーマンスに関する受験者の認識に影響されていると考え、追調査を行うこととした。なお、イベント索引化モデルの仮定する5次元の理解については評価者間一貫性が十分でなかったため、今回の分析からは除外している。この理由としては、テキストの特性が影響しているものと考えている。評価者間で不一致が特に多かったのは時間性、因果性そして意図性であったが、それは今回の実験で使用したマテリアルは説明文であることに起因していると考えている。 2点目の関連する研究の進捗について、本研究の基盤となるイベント索引化モデルに基づく読解メカニズムについても引き続き検証を行った。読解熟達度の高い学習者と低い学習者の読解プロセスを比較したところ、読解熟達度の差がテキストのイベント構造の理解に反映されていたことが示された。次年度の研究において、イベント構造の理解を評価項目に加えることも検討していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に立案した実験計画を遂行できたこと、そして本研究の枠組みとなる理論に関わる研究についても成果を上げられたことから、研究に一定の進捗が見られたと判断している。しかし、評価者間信頼性が十分でなかったことから、実験においてイベント索引化モデルに基づく採点方法の影響を検討できなかったという課題が残った。しかし、課題対しては理論的ならびに方法論的な解決案を検討することができた点は、次年度につながるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究の最終年度であり、研究を総括することとなる。3年間の研究に残された課題を丁寧に解決しながら、本研究の目的達成に向けて努める。その際、本研究の理論的枠組みであるイベント索引化モデルに関する研究成果も有機的に統合させることにも留意したい。研究成果の公表を積極的に進めることで、フィードバックを得ながら進捗させたいと考えている。
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