2015 Fiscal Year Research-status Report
日本人英語学習者と英語話者の相互行為における知識の共有:その過程と仕組みについて
Project/Area Number |
26770191
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
山本 綾 昭和女子大学, 人間文化学部, 講師 (10376999)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 相互行為 / 談話分析 / 接触場面 / 知識の共有 / 日本人英語学習者 / 英語母語話者 / 成員カテゴリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本人英語学習者と英語母語話者の間の相互行為を、「知識の共有」という観点から分析するものである。平成26年度は主に日本人側が持つ知識に焦点をあて、27年度は英語話者側の知識について調査した。調査の成果として以下の2点が挙げられる。 1.助言行動の実態: 日本人と英語話者の初対面ペアによる雑談を資料とし、英語話者が、どのような事柄について、どのような場面においてどのような形式で助言を与えるのかを明らかにした。また、英語話者による助言行動の背景についてpoliteness理論(Brown & Levinson, 1987)の枠組みを援用して考察を試みた。 2.Englishという語の使用を通して見えてくる成員カテゴリー化(membership categorization; Sacks, 1972): 学習言語としての英語をめぐるやりとりを抽出し、量的・質的に検討した。日本人と英語話者の会話のなかで、「学習者」対「教師」というカテゴリー対が繰り返し立ち現れることを指摘し、両者の間に「教える―教わる」という関係性が次第に構築されていく様相を明らかにした。 上記1、2の調査と並行して、3.談話資料の追加収集も進めた。日本人学生および英語圏出身の学生の協力を得て、小集団内の会話の模様を録音・録画した。母語話者と学習者の接触場面談話としては非常に活発なやりとりを収録することができ、本研究課題の推進のための貴重な資料が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の実施計画には二つの柱があるが、そのうち一つは予定通りに進行できている。もう一つは、初年度に遅れが生じた。今年度は、その遅れをふまえて手順などを一部修正し取り組みを進めてきたが、完遂には至っていない。 1.既に収集した談話資料に基づき実証的分析を進める、という計画については、全国規模の学会発表2件、それぞれに伴って発行される論文集・予稿集に各1編掲載、とおおむね順調に進められたと言える。 一方で、2.日本人英語学習者と英語話者による談話資料を新たに収集する、というねらいについては、まだいくつかの作業が残っている。今年度は質・量ともに十分な談話資料を収録できており、初年度の遅れを取り戻しつつある。しかし、比較的長時間かつ多人数間の談話を複数回にわたって録画・録音したために、今年度末の時点で文字化・データベース化が完了していない。当初は今年度が研究事業最終年度であったが、今後の研究の展開にとって重要な基礎資料が収集できたという点を考慮し、研究期間の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、日本人英語学習者と英語母語話者の接触場面談話を資料として用い、両者が共有知識を蓄積する過程やそれを支える仕組み、知識の共有を阻害する要因等について調査・考察する。具体的には、1.この二年間に行った調査の結果を統合するとともに、2.談話資料の整理と拡充を進める。 1.日本人英語学習者と英語母語話者それぞれについて行ってきた調査の結果をまとめ、論文や学会にて報告する。実証的な知見は既にある程度蓄積されているので、理論的な考察を深めることに重点をおく。そのために次年度前半は、会話分析や批判的談話分析の文献調査に集中的に取り組む。 2.今年度に追加収集した談話資料の文字化とデータベース化をできるだけ迅速に完了させ、分析に着手する。また、今年度の調査協力者と属性が似ている英語母語話者から協力が得られれば、日本人との会話をさらに収録し、談話資料の質と量をより充実させる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、主に、1.旅費と2.人件費・謝金の実支出額が当初の支出予定額を下回ったことによる。 1.旅費については、学会の日程と校務の重複により国外での学会には参加せず、国内学会のみに参加したため余裕が生じた。2.人件費・謝金については、初年度に談話資料の収集が滞ったことが影響している。今年度は多数の調査協力者を募って談話資料の収録を進めてきたものの、なお残金がある。 所属機関の異動に伴って、研究費の執行に関する内規や扱い(特に、物品の購入やメンテナンスにかかる費用、談話資料の収録時にかかる経費)が変わったことも背景として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、主として談話資料の整理と追加収集に充てる予定である。録画・録音済みの談話資料を文字化しデータベースを構築するために、機器や記録媒体等の消耗品を購入する。作業の一部を学生や専門業者に依頼・委託し、謝金・業務委託費を支払う。また、新たな談話資料を収集する際に協力者への謝礼に充当する。 この他に、研究成果を報告するための学会参加費・旅費、図書を購入するための物品費の支出を見込んでいる。
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Research Products
(4 results)