2018 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児音声の音響的分析と早期外国語教育の可能性の検討
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26770194
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 友子 芝浦工業大学, 工学部, 助教 (10726334)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 音声言語発達 / 早期英語教育 / 音韻の知覚と習得 / 言語と音節 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、乳幼児音声の初期の発達段階を観測し、言語習得の本質を探ったうえで、音声に焦点を当てた外国語教育を行い、早期外国語教育の可能性を検討することである。 音声知覚実験に関しては、2016年度から2017年度に収録した、日本語を第一言語とする家庭で生活する乳幼児の3カ月、8カ月、12カ月の縦断的データ(約40時間の録音)より、約900個の乳幼児の音声データを切り出し、知覚実験用の音声刺激を作成し、予備的な調査を行った。まず、乳幼児の音声データを7種類に分類したところ、音節がない発話の頻度は月齢が上がるにしたがって低下し、音節のある発話の頻度は月齢が上がるにつれて増加した。音節なし+音節ありの発話は8カ月で現れるものの12カ月で低下がみられた。 早期英語教育の実践的研究に関しては、2017年度より定期的に日本語環境に育つ、英語教育を受けていない児童を対象にワークショップを開催して、英語の音声の習得を観測している。ワークショップでは、英語の発音やリズムを習得できるように、英語のリズムに合わせて身体を動かしたり、発話とジェスチャーで感情を表す訓練などを行っている。 実践的研究として、まずは個々の母音の知覚と発話の関係を調べるために、児童(5-6歳)を対象に母音の音声の知覚と発話の実験を行った。子音+母音+子音の音韻でなる、母音のみが異なる単語のペアを、作成した。それぞれの単語にイラストと母語話者の音声を追加した。児童に、単語のペアの知覚実験を行い、母音の違いが聞き取れるか調べた。さらに、それぞれの単語のペアを発音してもらい、小型録音機を用いて音声を収録してデータベースを作成した。母音の音響的特徴(フォルマント)を分析した結果、英語母語話者とは異なる母音の音響的特徴がいくつかの母音について明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
乳幼児音声データの収録に関して、日本語圏では十分なデータが集まっているが、英語圏での各家庭や大学付属の託児所などでのデータが十分に収録できておらず、日本語圏と英語圏の乳幼児の音声の音響的特徴の比較の分析が進んでいない。 乳幼児音声の聴き取りによる知覚実験に関しては、2016年度から2017年度に収録した約40時間の音声より約900個の乳幼児の発話音声の切り出しを行い、知覚実験の準備を進めている段階である。 早期英語教育の実践的研究に関しては、定期的に日本語環境に育つ英語教育を受けていない児童を対象にワークショップを開催して英語の音声の習得を観察しており、音韻の知覚と発話の実験は行っているが、まだ英語の文を、幼児に模倣させたり、リズムに合わせて身体を動かすという動かすという誘導課題を設けて、検査課題を課す実験までは行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
英語圏の乳幼児の音声データの収録に関しては、英語圏の大学付属の託児所などと連携を取るように試みるが、難しい場合には、日本語圏の日本語環境に育つ乳幼児の音声発達に焦点を絞るように変更する。 乳幼児音声の聴き取りによる知覚実験に関しては、乳幼児音声(3カ月~12カ月)の音声刺激を作成して、日本語母語話者(成人)を対象に、音節の聴き取り実験を行い、月齢が上がるにつれて、乳児の発する音節がどのように変化するか調べる予定である。 早期英語教育の実践的研究に関しては、英語の母音の数を増やし、日本語の母音も同時に録音する予定である。また比較対象のために、日本人大学生の英語学習者の音声も録音する予定である。音韻の知覚と習得について年齢別に違いがあるか比較分析することで、外国語教育の低年齢化にともなう問題点を明らかにする予定である。 また、当初の計画では、合成音声によってさまざまなリズムを有する英語文を作り、幼児に模倣さえるとのことであったが、合成音声を用いて、リズムを有する英語文を作ることが技術的に難しい。そのため、感情・意図を表出するような英語の文を母語話者に読んでもらい、それを幼児に模倣させる誘導課題などを設けるように変更する予定である。幼児の音声を録音し、感情・意図によってどのように音声が変化するのか、音声の音響的特徴を分析する予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度は本実験の準備段階であり、それに伴う支出は支出は少なかったが、次年度は本実験を行う予定であり、実験に要する機器、被験者への謝金、録音した音声のコーパス作成やラベル付けなどのアルバイトに支出する予定である。 昨年度は、いくつかの実践的研究に関する実験を行ったが、結果をまとめて発表することができなかった。次年度は、国際学会での発表、また論文を投稿する予定であり、それに伴う支出が生じる予定である。
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