2015 Fiscal Year Research-status Report
統語論インターフェイスに基づく前置詞習得のむずかしさの原因究明
Project/Area Number |
26770195
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
藤森 敦之 静岡大学, 大学教育センター, 講師 (80626565)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 前置詞のむずかしさ / テキストマイニング / 出現頻度 / 空間表現 / 意味論的要因 / 認知・産出タスク |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度はじめに、英語学習者がどのように日本で英語教育を受けてきたかを把握するための調査を行った。中学校教科書(2社、3年分)のテキストマイニングを通して、主要な前置詞の初出時期および出現頻度の解析を行った。調査の結果として、空間表現としての前置詞が時間や抽象的概念を表す前置詞に比べて、出現頻度が低いことが明らかになった。 また、日本の大学に所属する学生を対象として、認知タスクおよび産出タスクを実施し、空間表現としての前置詞の意味理解について調査を行った。結果として、教科書で使用された前置詞の出現頻度と学習者の理解度の間に相関関係がないことが判明した。初級および中級の英語学習者にとって理解しやすい前置詞は、インプットの量よりも言語学的特徴に起因しており、その特徴として、より特定された位置関係を表す意味素性を挙げることができる。 今年度の研究結果は査読過程を経て、2016年9月に開催される国際学会Pacific Second Language Research Forum 2016に採択され、ポスター発表(タイトル:「The lexical acquisition of English orientational prepositions by Japanese EFL learners」)を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査項目が、当初予定していた統語論のものから意味論のものへと順番が前後してしまったものの、前置詞のむずかしさについての調査を着実に進め、言語学および学習者の習熟度や学習状況など多角的観点から観察することができた。また、年度を跨いでしまったが、H28年度に査読付きの学会発表を行う機会も得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度はじめは、残された課題である前置詞の形態統語的な複雑さと習得の関係について調査を行う。前置詞の統語的なステータスについては、全て機能範疇であるとする立場(Baker, 2003; Svenonius, 2010)―強い統語論仮説―と形態的に単純な前置詞(in, at, on)は機能範疇で、複雑な前置詞(onto, in front of) は語彙的範疇とする立場(Dechaine, 2005; Cinque, 2010)―弱い統語論仮説―がある。第2言語習得において、学習者が形態と意味との関係に敏感であるかを検証するため、形態的に単純な前置詞と複雑な前置詞両方を含んだ認知および産出タスクを行う。 また、今年度はプロジェクトの最終年度にあたるため、前置詞の形態統語論的、意味論的な複雑性さらには統語論的な随意性と習得との関係について3年間の研究で解明してきた事項をまとめ、国内外の学会で発表を行うとともに、ジャーナル等に積極的に論文を投稿して、本プロジェクトを締めくくる。
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