2016 Fiscal Year Research-status Report
定型表現の認知優位性および偶発的学習条件に関する研究
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26770199
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
磯 達夫 東京電機大学, 工学部, 准教授 (40438916)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 定型表現 / 認知処理速度 / 語彙化 / 日本人英語学習者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,主に英文読解及び聴解の際に英語母語話者が享受する定型表現の認知処理優位性が日本人英語学習者にも認められるかについての調査である。ここでいう「定型表現の認知処理優位性」とは,定型表現を語彙化し,一語として処理するために,認知処理にかかる時間が短くなる現象を指す。 これまでの研究機関中,日本人英語学習者の定型表現の認知速度を測定するテストを作成し,それを用いてデータを収集して来た。本研究のこれまでの分析では,日本人英語学習者には定型表現の認知速度優位性が見られていない。しかしながら,以下の問題点が明らかとなっており,これらの問題点を克服し,さらなるデータの収集が必要である。 1. 対象としている学習者がすでに知っている定型表現の数に大きな限界があり,統計的に信頼できるデータを収集することが非常に困難である。, 2. 本研究で開発したテストを用いた場合でも,英語母語話者の定型表現の認知優位性が認められることを確認する必要がある。 これらの問題が明らかとなった後,過年度までは,実験参加者にとって既知の定型表現を収集したり,より精緻な言語認知処理時間の測定の仕組みを工夫したりして来たが,残念ながら有意義な結果を導き出すまでには至っておらず,語彙化していることが伺える定型表現も認められる一方で,定型表現であるにも関わらず,それを構成している複数の語を一語ずつ処理していると思われるものも存在している。また,参加者にとって既知である可能性が高い句動詞のみを扱って来たため,語彙化している場合とそうでない場合の処理の時間差が計測できていない可能性も指摘されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績の概要で述べた通り,研究を遂行する上で解決しなければならない大きく2点の問題が生じた。しかしながら,研究の目的を大きく変えることなく,対処できる可能性が残されているため,研究機関を延長する予定である。これら問題への対処については,今後の研究の推進方策に記載する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は上記2つの問題点を克服し,さらなるデータを収集・分析する。具体的には,既知の定型表現数見られる限界については,より習熟度の高い参加者に対して実験を行うこと,また,定型表現の範囲を拡大し,日本人英語学習者が語彙化していると考えられる表現を実験対象として含めることを検討する。 また,英語母語話者に対して調査を行う必要がある問題については,定型表現の認知処理速度を測定するテストを多言語化し,日本国内のみならず,海外在住の英語話者からもデータを収集し,日本人英語学習者の認知処理優位性の有無を判断する際のベースとする。また,同時に本研究で作成したテストの信頼性を示すデータとして使用する予定である。 さらに,より精緻なデータを収集することができるように,本研究で作成したテスト自体の改変を行う予定である。このため,期間を延長して研究を継続するが,テスト改変のために必要なプログラミング用,またデータ収集用のコンピュータ端末を購入する計画である。
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Causes of Carryover |
研究計画の遂行上で発生した問題を解決するために,計画の変更を余儀なくされた。平成28年度の大半をこの計画変更のために費やし,研究期間の延長を視野に入れ,延長が可能となれば,データ収集プログラムの改変,データの収集(日本国内・および国外),研究成果の発表を行うこととした。このため,平成28年度は研究費の使用自体を極力控えたため,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由の通り,平成29年度はデータ収集プログラムの改変,データの収集(日本国内・および国外),研究成果の発表を行う。より精緻なデータ収集のため,テストプログラム自体を改変し,日本人英語学習者,および日本国内外に在住の英語母語話者からデータを収集する際に必要となる,コンピュータ端末の購入を予定している。また,国際学会等で研究成果を発表するための旅費として研究費を使用する計画である。
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